海外短信 No.707 2025年9月
No.707 2025年9月
海外の冷凍空調関連の気になるNEWSをピックアップし、掲載していきます。
国連環境計画(UNEP)による各国政府のNDCへの支援
国連環境計画(UNEP)は、各国政府が持続可能な冷却を国家別貢献目標(NDC)に組み込むためのガイドを策定しました。このガイドラインは、国別事例研究に基づいて、政策立案者がハイドロフルオロカーボン(HFC)とエネルギー関連排出量を評価し、部門別の目標を設定し、国家冷却行動計画(NCAP)を策定するための6段階のフレームワークを提供します。- さらに、ガイドラインでは最低エネルギー性能基準やキガリ協定に基づく冷媒の段階的削減、受動的・自然に基づく解決策、気候変動に対応した都市計画が強調されています。これらの措置は、省庁間の調整と進捗監視のための体系的な測定・報告・検証システム、そして公平なアクセス拡大を目指した強い焦点によって支えられています。また、これらのガイドラインは、UNEPクール・コアリションNDC作業部会やその他の関連機関の協力により策定されました。報告書はUNEPのウェブサイトからダウンロードできます。
UNEP support for governments’ NDCs
Cooling post 2025年6月
2. パナソニック、エアコンのリサイクルでCO2排出量目標に取り組む
パナソニックは、ネットゼロ目標の実現に向けて2001年以来、加東市の家庭用家電リサイクル施設で500万台のエアコンをリサイクルしてきたことを発表しました。そして、2022年には2050年までにCO2排出量を少なくとも3億トン削減するという「グリーン・インパクト」ビジョンを掲げ、全バリューチェーンにおいて1億1,000万トンの削減を目指しています。
加えて、同社は日本国内の全250工場を2050年までにネットゼロ対応にすることを誓約し、すでに45工場がこの目標を達成しています。 また、加藤市にあるパナソニック・エコ・テクノロジー・センター(PETEC)は、廃棄家電から金属や樹脂を回収し再利用することで新たな製品を創り出すリサイクルの中心的存在となっています。特に、今年5月にはエアコンやテレビ、冷蔵庫、洗濯機のリサイクルで累計2,000万台を達成し、その中の493万台はエアコンとなっています。パナソニックは、自社のCO2排出削減だけでなく、事業を通じて社会全体の削減貢献を拡大し循環型経済を実現することを目指しています。
Panasonic tackles CO2 emission targets
Cooling post 2025年6月
3. AIが家庭のエネルギー使用量を半分にできる可能性、最新研究で判明
スペイン・マラガ大学と空調メーカー「Airzone」の共同研究によると、スマートサーモスタットや自動ブラインドなどの「かしこい気候制御技術」を使うことで、家庭の冷暖房エネルギーを最大50%削減できることがわかりました。
この研究では、自然光と温度をうまく調整しながら、エアコンや照明を自動制御する「インテリジェント・アルゴリズム」を使用。各部屋を自動で最適に調整することで、従来の空調システムと比べて40~50%のエネルギー削減が実現されました。
この仕組みは、今ある家にも後から取り付け可能で、大きなコストをかけずに「快適さ」と「省エネ」を両立できる点が魅力です。
特に電気代が高く、日照時間が短いイギリスのような国では、自然光を効率よく活用することで、照明も減らせるというメリットがあります。
Intelligent algorithms could halve domestic energy use, new study finds
RAC 2025年7月
4. インド政府、エアコンの最低温度を20℃に設定する方針を検討
インド政府はエネルギー効率の向上と電力負荷の軽減を目的に、エアコンの設定温度を20~28℃の範囲に制限する新たな規制を検討している。これにより、利用者は20℃未満に冷房温度を設定できなくなる。家庭やホテル、自動車のエアコンも対象で、関係業界との協議が進められている。
背景には、エアコンによる電力消費の急増と、1℃の温度上昇で消費電力が約6%削減されるという試算がある。
Government Considers Fixing Minimum AC Temperature at 20°C
Cooling post 2025年7月
5. FRIGAIR 2025、アフリカのHVAC&R市場を活性化
南アフリカ冷凍空調協会(SAIRAC)主催のFRIGAIR 2025が6月4~6日にミッドランドで開催され、150社超が出展、約4,500人が来場。アフリカのHVAC&R市場の成長性を示す場となった。
展示会や技術フォーラムでは自然冷媒への移行が主要テーマとなり、各社がCO₂やアンモニア製品を紹介。南アはキガリ改正を批准し、HFC削減へ向けた制度整備を進行中。ビッツァーは低GWP冷媒の導入を呼びかけた。次回は2028年に開催予定。
FRIGAIR 2025 Ignites Momentum in Africa’s HVAC&R Market
JARN 2025年7月
6. 米国の税制変更でHVAC業界に冷え込みの兆し
7月4日に成立した米国の大型税制改革法「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」により、住宅向けの高効率HVAC機器への税額控除(セクション25C・25D)が2025年末以降廃止されることになった。これには、年間最大3,200ドルの控除や設置費用の30%控除が含まれる。
商業用の省エネ建築向け控除(セクション45L・179D)も2026年半ばで終了予定だ。専門家は、控除廃止が高効率技術の普及を鈍化させ、消費者インセンティブや投資を減少させる可能性を懸念している。一方、HVAC関連の職業訓練支援は強化され、教育貯蓄制度の対象となった。業界は今後の影響を注視している。
U.S. Tax Shakeup Sends a Chill Through HVAC Industry
JARN 2025年7月
以上