コロナ禍での海外赴任体験。日本人住みたい国ランキング1位のマレーシアでの海外駐在記【後編】 ダイキン工業 原田
No.697 2024年5月
東南アジア・マレーシア編、ダイキン工業原田様による海外駐在記、後編スタートです。前編はこちらから
1.「打ったどー」ワクチン接種後、記念写真 陽気なマレーシア人に心安らぐ
暗い話ばかりしてきましたが、異文化に触れることはむしろ楽しいことが多く、心動かされた出来事をいくつか紹介いたします。まずは、何でもイベントにしてしまう陽気さです。ワクチン接種というとなんとなく暗いイメージが付きまといますが、それすらも私にとっては笑いを取ろうとしているのではないかと思えるような接し方です。
写真で紹介しているのは、ワクチン接種後に記念撮影をしている様子です。『打ったどー』って、記念写真を知り合いに送っているのです。私もその場でローカルの同僚の目にとまり、一緒に写真撮ろうって誘われた時には、思わず苦笑い。なんて陽気な人々なのでしょう。
写真1:記念撮影の一コマ
2.多宗教国家マレーシア、異文化の共存
マレーシアはイスラム国と思われがちですが、仏教やヒンズー信徒も一定数存在する多宗教国家です。それぞれの教義とは信仰する方々にとっては生活そのものであり、一般的には他の信仰に対しての受容性は高いとはいえません。
しかし、この国はちょっと様子が違います。私には、和の精神に通じるような寛容さ、底抜けの明るさが基底にあるように思えます。モスク(ムスリムお祈りの場所)がある場所から、一本隔てた通りには仏寺があり、またすぐその先にはヒンズーのお寺がある。
半径数十メートルの中に3つの宗教信者が隣り合わせにいる。それはお互いを認めあい、尊重しているようにも私の目には映ります。競争・対価交換といった功利主義に毒された私にとっては、ここはまるで異世界。ここには間違いなく「共同体」が生き残っており、生活そのものに人と人とのつながりや温もりが濃厚に感じられます。寛容さと受容性の高さ・喜捨の文化を持つマレーシア人とは、これからの世界を救う人々かもしれないと勝手に妄想しています。
ところでイスラム教というと、ちょっと怖いイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、私が接したムスリムの方々はとても穏やかでフレンドリーでした。家族を大事にしている様子は、単身赴任者にとっては羨ましくもあり、またこれまでの自分の不徳を恥じることも多々ありました。また個人的には、ビジャブ(女性が髪を隠すためのスカーフ)を被った少女がなんとも愛くるしく見えて、心癒されます。
写真2:ムスリム家族の記念撮影の様子
写真3:ムスリム親子の通学時の一コマ
3.羊も丸ごと調理します。異文化の融合
さらにマレーシアは食もバラエティーに富んでいます。ムスリムは豚さん禁止なので羊も良く食べます。工場でのイベントで見た羊の丸焼きには正直度肝を抜かれました。ビビリの私にはなかなか手が出せません。またこの国には中華系が2割強、中華料理もなかなかの美味です。職場の方々に連れられて出向いたレストランでは、旧正月のお祝いする食事に鶏の丸焼きがでてきました。この国は丸ごと食べるが定番なのか思うほどですが、とにかく食に困ることはありません。
またここは多宗教国と述べましたが、料理や建築などでも各国伝統文化が融合した足跡が残っています。例えば、マレーと中華がフュージョンしたニョニャ料理や、プラナカン様式と呼ばれる建築や工芸品など素敵な文化がいまだに息づいています。
写真4:豪快な羊の丸焼き
写真5:旧正月のお祝い料理
写真6:青色したご飯/ニョニャ料理
4.おわりに
わずか2年の赴任ではありましたが、とてもエキサイティングな海外赴任でした。自分はこれまでそれなりに知識や経験を積んできたと思っていましたが、実は何も知らないことばかりだったこということを学んだような気がします。
あえて言葉にするならば、『無知蒙昧』~自分は何も知らないということを自分で認める~ 自分は何も知らないのだから、まだまだ教えてもらうことはたくさんあると考える。
現地の方と接する際、その国の文化や歴史を理解する気持ちがあれば、自然と相手をリスペクトできるし、いろいろな世界が見えてきます。なにより素直に教えを乞うことができれば、仕事も生活もラクで楽しいものになってくるようです。虚勢を張ることよりも、ノーガード戦法で相手の懐に飛び込む勇気を持つことが出来れば、何よりも無敵になれるような気がします。
” 世界はほしいものであふれている(by NHK)” ではありませんが、まだまだ知らない世界がたくさんあります。異世界に飛び込んで宝物をゲットしましょう。締まりのない投稿ですが、これから始めて海外赴任される方の参考になれば幸いです。
写真7:愉快な仲間達との一コマ
過去記事
■中国駐在記 (日冷工 安田)
■アメリカ駐在記(サンデン・リテールシステム 柳澤様)
■トルコ駐在記(ダイキン 今泉様)
■ドイツ駐在記(パナソニック 小林様)
■インド駐在記(日冷工 波多野)
■中国駐在記(日冷工 大井手)
■インドネシア駐在記(パナソニック 菅沼様)
■ブラジル駐在記(日立JC 佐々木様)
■台湾駐在記(荏原冷熱 勇様)
■中国・マレーシア駐在記(日冷工 長野)
■ロンドン駐在記(日冷工 笠原)
■ノルウェー駐在記(日冷工 坪田)
以上