2023年度 省エネ大賞
省エネルギーセンター会長賞
フクシマガリレイ株式会社
No.696 2024年3月
【製品・ビジネスモデル部門】
ワイドレンジタイプ「受取用コールドロッカー」
写真1.2023年度省エネ大賞表彰式
1.はじめに
近年、外食業態が大きく変化している。図1は外食業態におけるテイクアウトサービス市場規模の推移である。2019年よりデリバリーとテイクアウトサービスが増加していることが分かる。
図1.テイクアウトサービス市場規模(※1)
図2は人手不足企業の調査結果である。コロナ禍を経て人手不足の割合が以前より悪化しており、中でも飲食店の人手不足は深刻であり、約7割の企業が人手不足に陥っている。
テイクアウトサービスにおいて、店頭で商品の受け渡しや決済を行うには人手が必要である。受取用コールドロッカーは、従業員の手を介さずに商品の受け渡しから、料金決済まで行える製品である。テイクアウトサービスの市場規模拡大と、飲食店の人手不足という深刻な問題に大きく貢献できる製品である為、本製品の開発に着手した。
図2.人手不足企業の調査結果(※2)
2.製品の概要
本製品は、飲食店やスーパーマーケットなどで、商品の受け渡しに使用されている。代表的な使用方法は、初めにお客様がパソコンやスマートフォンから商品を注文する。注文を受けた飲食店は、商品をロッカーに入庫する。入庫の際に鍵を掛け、お客様に鍵を開ける暗証番号を連絡する。ロッカーにはQRコードリーダーが備え付けられており、暗証番号は数字やアルファベットの組み合わせだけでなく、QRコードにも対応している。お客様は暗証番号をロッカーに入力することで、中の商品を受け取ることができる。
ラインナップは8機種あり、それらの組み合わせで30通りのパターンが存在する。
表1.製品群
3.製品の技術的特徴
(1)インバータ圧縮機搭載
本製品は従来、冷蔵・冷凍をそれぞれ別機種でラインナップしており、一定速圧縮機を搭載していた。本製品は-20℃から+15℃の幅広い温度帯で使用できるワイドレンジタイプとする必要があり、一定速圧縮機では設定温度によって冷却不足や冷却過多の原因となる。そこで冷却能力の調整が可能なインバータ圧縮機を搭載した。
(2)結露防止用ヒーター通電率削減
本製品は冷却機能を有しており、庫内を冷却するに伴って、本体の枠(図3青色部分)が冷え結露する。そこで結露を防止するヒーターを本体の枠に内蔵している。従来のヒーターは常時通電させていたが、不要な電力を削減する為、ヒーターの通電率を可変できる制御を搭載した。
庫内温度が低く結露リスクの高い状態では通電率を上げ、庫内温度が高く結露リスクが低い状態では通電率を下げるようにした。このように、必要な時だけヒーターを通電させることで省エネを図った。
図3. 本体枠ヒーターの通電部
(3)本体開口部の仕切り改良
本製品にはタッチパネルを取り付ける場合があり、その裏側は開口部である為、断熱が必要である。
従来は箱状の板金の内側にウレタンをはめ込んだ部品を開口部に取り付けていたが、これだけでは庫内の冷気が庫外に伝熱し、結露が発生する。従って、ここにも結露を防止するヒーターを板金に取り付けている。本製品では、箱状の板金の庫内側にウレタンを張り付けた部品を開口部に取り付けた。板金が庫内に突出することがなく、板金が冷却されにくくなり、結露を防止するヒーターの廃止を実現した。
図4.本体開口部の仕切り新旧比較
(4)省エネ性能比較
本製品の全バリエーションの中で最も多く販売している、パススルー3台連結の冷蔵タイプにおける年間消費電力量は、従来製品の年間5,400kWhから2,100kWhとなり、61.1%の大幅な省エネを実現した。
試験条件は以下の通り。
・無負荷冷却運転(庫内に商品等が無い状態)24h測定
・扉開閉は無し
図5.省エネ性能比較
4.おわりに
本製品は、テイクアウトサービスやネットスーパーに活用できる製品である。先に述べたように、テイクアウトサービスの市場規模は増加傾向にある。本製品を導入することで、レジや対面での商品の受け渡し対応の省力化に繋がり、人手不足解消に貢献できると考えている。また、集客率の高い店舗ではテイクアウトサービス利用客の増加が見込まれる為、回転率の向上にも繋がる。省エネ化を実現し、ランニングコストを大幅に削減したことで、お客様にお役立ちができると考えている。
今後も、省エネルギーへの取り組みだけでなく、環境問題や人手不足等の社会問題解決の一端を担う製品を開発することで、社会に貢献していく。
※1_エヌピーディー・ジャパン調べより
※2_帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査より
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以上
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