FOOMA JAPAN 2023 第46回 世界最大級の食品製造総合展 参加報告(1)
No.692 2023年7月
6月6日~9日の会期で東京ビッグサイトで開催されたFOOMA JAPAN 2023に、広報委員会委員、事務局の数名で見学、視察を行いました。当工業会会員会社、合計10社のブースを訪問し取材しましたので4回に分けてご報告いたします。こちら本号第1部では、フクシマガリレイと三菱電機のブースのご紹介をします。FOOMA JAPAN 2023報告(第2部)はこちら
展示会名:FOOMA JAPAN 2023 世界最大級の食品製造総合展
主催:一般社団法人日本食品機械工業会
会場:東京ビッグサイト東1~8ホール
会期:2023年6月6日(火)~9日(金)
写真1:FOOMA JAPAN 2023 会場前
1.FOOMA JAPAN 2023 全体概要
本展では、“Accelerate FOOMA”、加速する食品製造機械をテーマに、「食の安全・安心」を守りつつ、食品製造現場のニーズに対応した高度画像処理・センサー技術、ロボット技術、AI、IoT技術など先進技術を活用した最先端のテクノロジーと、最新鋭の製品やシステムが多数展示されました。
covid-19蔓延期が収束し5類に移行後初の展示会となった本展は、全日程を通じて出展社数969社、来場者数106,104名と大盛況に終了しました。
当工業会会員企業からも、三菱電機、三菱重工冷熱、フクシマガリレイなどが展示を行っており、自然冷媒等を活用した最先端の空調・冷凍技術を駆使した製品展示が多く見受けられたのが印象的でした。
会員企業各社ブース訪問の詳細は、以下をご覧ください。
2.グッドデザイン賞2022を受賞、食の安全性と環境への配慮を追求
フクシマガリレイ株式会社
当工業会の会員企業であるフクシマガリレイがグループ会社と共同出展されており、ご報告いたします。
フクシマガリレイのグループブースでは「GALILEI GO‼」をテーマに、「未来に向けた改善提案」を紹介されていました。
「凍結と解凍をコントロールすることで、品質・衛生・作業時間の改善につながる」が展示コンセプトで、グループをあげて2030年までのグリーン冷媒への転換を進めており、今回の展示はそのテーマに沿ったものになります。
滞在時間が短く、出展製品のすべてを見学できなかったのが残念でしたが、その中で特に印象深かったものをご紹介させていただきます。
「冷凍冷蔵用アイランドショーケース」AMシリーズ
初めに伺ったのは、ブース中央に展示され、来場者の関心を引いていた「冷凍冷蔵用アイランドショーケース」AMシリーズ。
グッドデザイン賞2022を受賞したラウンドフォルムの魅力的なデザインにまず目を引かれましたが、新型ということでは地球環境への配慮が気になるところ。
写真2:冷凍冷蔵用アイランドショーケース」AMシリーズ
写真3:エアカーテンを使い、安全性をはかる
こちらの製品は、近年冷凍冷蔵分野での採用が行われている低GWPの「R448A」冷媒を採用しています。地球温暖化係数は1390と、従来(R404A)の3920と比べ約64%低いのが特長です。
そしてもうひとつは「インバーター冷凍機内蔵タイプ」という点。
内蔵タイプのメリットとして、配管設置が不要。レイアウト変更も容易で、かつ、蒸発皿の工夫により排水が取れない場所での設置も可能。
開口部はスライドタイプの扉でなく、エアカーテンを使い温度管理を図っているそうで、温度管理とデザイン性の両立を図っています。
スーパーマーケットの店舗以外にも、催事場やイベントにも採用されているそうなので、見かけたら(店員さんに怪しまれない程度に)じっくり拝見しようと思います。
次世代を意識したCO2冷凍システム NOBRAC(ノブラック)
つぎは「CO2冷凍システム NOBRAC(ノブラック)」です。こちらはトンネル式のフリーザーや冷凍冷蔵庫向けの冷凍システムです。
写真4:CO2冷凍システム NOBRAC(ノブラック)
トンネル式のフリーザーと聞いて、冷凍業界に携わっていない人にはあまり聞きなじみのないものですが、実はとても身近な製品です。ハム、ソーセージを筆頭に、冷凍麺や冷凍ピラフ、ハンバーグなどの冷凍食品など、スーパーマーケットの食品には欠かせません。
従来の冷却システムはR404A冷媒(GWP:3920)が主流でしたが、CO2のGWP値は1。NOBRAC(ノブラック)は従来機比約20%と省エネ性にも優れています。
冷凍システムへのCO2冷媒の普及がどれだけ進むか、その点が2030年へ向けてのキーポイントになるのは間違いないと感じました。
ちなみに、ノブラック(NOBRAC)というネーミング。
CARBON(カーボン=炭素)を逆にするとNOBRACとなります。「CO2増加の流れを逆転させる」というグループを挙げての決意がネーミングにも込められています。
次世代のスパイラルフリーザー
最後は「次世代のスパイラルフリーザー」です。
空調・冷凍業界に籍を置く身として恥ずかしながら、スパイラルフリーザの実物は初めて拝見しました。
写真5:次世代のスパイラルフリーザー
食品工場向けの冷却システムとして、総菜からパン生地、和菓子や液体調味料など、様々な食材を短時間でムラなく冷凍するニーズに対応しています。短時間で効率良く冷凍できるため、冷凍して流通させる食品の大量生産をおこなう事業者にはかかせないシステムです。
従来の一般的なスパイラルフリーザーは、別置きされたクーラーからの冷風をベルトコンベアに導き、食品を冷却する方式です。
そのため「洗浄やメンテナンスに手間がかかる」「導入コストが高い」「冷却効率が低い」というデメリットがありました。こちらはクーラーや送風機をベルトコンベアの上部に一体化して配置したことで食材をムラなく(効率よく)冷却し、また床を集中排水構造とすることにより、洗浄性を大幅に向上させています。
展示のシステムはコンセプトモデルということでしたが、次はぜひ食品会社の工場見学で、実際の食品が冷凍される瞬間を見てみたいですね!
3.2050年のカーボンニュートラルに向けた「省エネ化・省人化」の提案
三菱電機株式会社
FOOMA JAPAN 2023では、2050年のカーボンニュートラル実現や、電気料金高騰、人手不足などの課題を抱える食品業界に向け、「『省エネ化・省人化』技術を、食の現場で実装」をテーマにかかげPR活動を行っていました。
写真6:業務用エコキュート/小型業務用エコキュート展示の様子
ブースは4つのゾーンに区分けされ、課題ごとにわかりやすく展示
①「省エネ化をシェア」
②「省人・省力化をシェア」
③「カーボンニュートラルへの貢献をシェア」
④「安心・快適な現場作りをシェア」
このうち、当工業会として共通の課題である「カーボンニュートラルへの貢献をシェア」ゾーンの展示物に着目しました。
業務用エコキュート/小型業務用エコキュート
昨今は、カーボンニュートラルに向けた企業の取組として、熱源転換が進んでいます。ガス及び油ボイラーを使用している現場において、業務用エコキュートに転換した場合、CO2排出量は38~46%の削減、ランニングコストは約44~45%の削減が可能という試算を、中規模の病院を例にあげ、説明されていました。
写真7:入替えによるランニングコスト・CO2排出量比較グラフ
業務用エコキュートは福祉施設や宿泊施設に、小形業務用エコキュートは保育園、スーパー等によく採用されています。
2023年は、国や自治体のエコキュート補助金の制度も後押ししており、需要が更に上がっているそうです。
コンデンシングユニットでフロン漏えい対策
フロン排出抑制法への対応の中で、三菱電機では従来からコンデンシングユニットには冷媒不足(漏えい)の可能性を検知しアラームを発報する機能である「冷媒不足検知機能」が搭載されていました。
それに加え、6月からモデルチェンジされる新製品に同梱される蛍光剤で、漏えい箇所を特定する新技術が展示されていました。冷媒配管内に蛍光剤を封入することで、万が一の漏えい時には、UVライトを充てると漏れ箇所が即座に可視化されます。
早期発見と早期修理が可能となり、冷媒漏えい量の削減と共に、労働作業時間の短縮にもつながります。先にあげた4つのテーマのうち、②の省人化と③カーボンニュートラルの両面に貢献しています。
写真8:蛍光剤による冷媒漏えい箇所特定技術の実演展示の様子
低GWP冷媒対応
三菱電機は、冷媒規制の状況や市場ニーズにより、「環境性」「安全性」「経済性」「省エネ性」の観点から、機器に応じた総合的な視点で冷媒を選択しています。コンデンシングユニットにおいては、現在のところ、R463A-Jが最もバランスのとれた冷媒とし、製品に展開しています。
パリ協定(2015年採択、2016年発効)にて日本を含む126ケ国と地域が2050年までにカーボンニュートラル実現を目標とする枠組みが成立し、温室効果ガス(代替フロン)排出削減に向けた動きが加速しています。
今後、HFC代替フロンに対する取組が一段と加速すると予想され、待ったなしの状況です。三菱電機を始め、当工業会会員企業各社の取組をFOOMA2023にて目にすることができました。
取材にあたり、多くの来場者が立ち寄る中、展示物の撮影の許可並びに丁寧な説明とご協力に感謝申し上げます。
本号掲載の第2部では、三菱重工冷熱、ホシザキ、SARAYAの記事を掲載いたします。記事第2部はこちら
以上