2022年度 省エネ大賞
経済産業大臣賞
ダイキン工業
No.690 2023年5月
製品・ビジネスモデル部門
ZEHに最適な除湿機能付き外気処理換気システム『Saravia(サラビア)』
1.はじめに
当社では2012年以来11年連続で省エネ大賞を受賞し、脱炭素社会に貢献するものづくりを目指しています。
2022年度は家庭用部門において、当社の除湿機能付き外気処理換気システム「Saravia(サラビア)」の高気密・高断熱住宅における家全体での除湿による省エネ効果が評価され、経済産業大臣賞を受賞いたしました。
写真:受賞写真
本製品は、高気密・高断熱が特長のZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など、比較的湿気がこもりやすい空間において優れた除湿性能を発揮する省エネ換気システムです。
全熱交換器とヒートポンプ熱交換器を一体化し、外気の温度・湿度を整えてから室内へ取り込むことで、家全体での換気+冷房の消費電力量を従来の全熱交換器を使用した場合と比較して、約20%削減※します。
表1: 夏場(6~10月)におけるSaraviaによる換気
+エアコンの消費電力の削減効果
※ 住宅条件:C 値2.0、Ua 値0.6、6 地域、床面積165 ㎡、換気風量198 ㎥ /h(2 台)、内部負荷: 国土交通省Web プログラム住宅モデル試算ベース。夏場において、家全体を湿度60% 以下に抑える場合、全熱交換器+エアコン(自動運転) との比較(計算ソフト「TRNSYS18」で試算)。
全熱交換器+エアコンの場合は再熱除湿ありエアコン(S22YTFXS-W×2 台、S40YTFXP-W×2 台)、Saravia+エアコンの場合は再熱除湿なしエアコン(S22YTES-W×2 台、S40YTEP-W×2 台) を使用。
※部屋の温湿度条件を合わせた際の省エネ効果を算出するため、全熱交換器の場合は再熱除湿ありエアコンを使用して試算。(再熱除湿なしエアコンでは湿度60% をキープできないため。)
2.製品の技術的特徴
■開発背景 ~高気密・高断熱なZEH住宅でのエネルギーの課題
建築物省エネ法改正による新築住宅の高気密・高断熱化やZEH化に伴い、全熱交換器を使用する換気は今後急速に普及すると予想されます。
住宅性能を向上させると、冬場は暖房にかかる消費電力が削減でき、快適性も向上しますが、冷房・換気のエネルギー消費量は削減できないため、省エネ換気の重要性が増しています。
表2: 住宅性能を上げることによる省エネルギー効果
また、高気密・高断熱住宅では夏場は室内で発生する湿気がこもりやすく、また湿気を含んだ外気が全熱交換器を通って入ってくるため、エアコンの除湿運転にかかる消費電力が増加しやすい傾向にあります。
コロナ禍で在宅時間が増加し、複数人が家に滞在し別々の部屋を利用するシーンも増え、その傾向がさらに強まっています。
そのため、高気密・高断熱住宅では、外気から流入する湿度負荷を抑え、換気+冷房の消費電力量を削減することが重要になります。
■技術的特長
本製品の主な先進性・技術特長は以下の3点です。
⑴ 外気処理によりエアコンよりも高効率な除湿を実現
⑵ 外気処理除湿を最適化する独自の自動モード制御
⑶ 機内の低静圧化による機器消費電力の削減
1,2により冷房の除湿に係る消費電力を削減し、3により換気機器としての消費電力を低減することで、上記の換気+冷房の消費電力量の約20%削減を実現しています。
(1) 外気処理によりエアコンよりも高効率な除湿を実現
本商品は従来の全熱交換器にヒートポンプ熱交換器を追加で搭載しています(図1)。
全熱交換エレメントでの熱交換に加えて、ヒートポンプ熱交換器で除湿することで、確実に余分な湿気を取り除き、屋内へ供給します。
表3はエアコンの除湿に対する、外気処理除湿の考え方を空気線図上で示しています。
エアコンでは運転により室温が低くなるため、室温安定時に十分な除湿量を得るためには再熱除湿を行う必要があります。
一方、外気処理では外気温の高い冷房時期は、再熱除湿に入らずに温度差をつけて除湿することができ、エアコンよりも効率の良い除湿が可能です。
図1: 外気処理のしくみ
表3: 外気処理の考え方(空気線図)
(2) 外気処理除湿を最適化する独自の自動モード制御
本製品は「換気」「再熱除湿換気」「冷却除湿換気」「加温換気」の4つのモードを搭載しており、屋外から流入する空気の温度・湿度を検知し、季節に応じた最適な制御を自動で選択します。
当社がルームエアコンの開発で培った除湿制御技術を応用することで、高効率かつ快適な外気処理を実現します。(図2)
図2: Saravia各モードの運転イメージ
(3) 機内の低静圧化による機器消費電力の削減
本製品では、従来の全熱交換器に加えヒートポンプ熱交換器を搭載するため、機内静圧の上昇による消費電力増大が課題でした。
これは製品サイズを大きくすることで解決可能ですが、ビルダー様からは天井裏設置が可能なサイズ(W800×D580×H250以下)を求められていました。
サイズ制約の中で①通風経路の見直し、②ファンの小型・高効率化を行うことで、低静圧な機器設計を実現しました。
①通風経路の見直しによる機内静圧の低減
全熱交換エレメントの面積を最大化できる配置、凸型ベルマウスによるロスの少ない吸い込みの流れの確保、ファン、モータの高さ低減による吸い込みの通風面積の拡大の3つの構造改善を行い、抵抗の少ない通風経路を実現しています。(図3)
図3: 機内静圧の低減のための部品配置・構造改善
②ファンの小型・高効率化
限られたスペースの中でファンの能力を最大化するため、スクロールは給気を優先してスペースを使用し、排気側は縦方向に経路を広げる設計とすることで、給気・排気の両方の性能のバランスが取れた構造としました。(図4)
また、ファンは風量・静圧・消費電力がベストになる径と高さの最適設計を行うことで、小型でも十分な風量性能を確保しています。
図4: 各経路に合わせたスクロールの最適設計
3.おわりに
コロナ禍で在宅時間が増加し、家族が別々の部屋でエアコンを利用するなど、消費電力の増大が社会的な課題になっています。
当社は製品・サービスの環境性能を向上させるとともに、人々の生活スタイルの変化やその時々の市場のニーズを汲んだ換気商品をタイムリーに開発・普及させ、家全体での省エネや快適な居住空間づくりに寄与していきます。
以上