2022年度 省エネ大賞
省エネルギーセンター会長賞
フクシマガリレイ株式会社
No.689 2023年3月
製品・ビジネスモデル部門
単相100Vで-40℃を可能とした「ブラストチラー」
写真1:表彰式の様子
1.はじめに
中食需要の増加により冷凍食品のニーズが高まっている。大手チェーンから個人飲食店に至るまで、テイクアウトサービスの導入や、冷凍販売など新たな分野への参入を進めている。
飲食店が業態転換を図る上で、急速冷却器が必要であるが、既存店舗にそのまま設置できるものが望ましい。
しかしながら、急速冷却器は、求められる冷却性能から製品が大型且つ電源が三相200Vの製品が一般的であった。
そこで当社では、コンパクトで且つ、単相100V電源で-40℃の凍結運転まで対応できる「ブラストチラー100V」を開発した。又、製品サイズや電源に加えて、省エネ性、環境負荷低減を追求することで小規模の飲食店まで広く普及させることを目指した。
写真2:食品を冷却する様子
写真3:ブラストチラー100V
2.製品の概要
ブラストチラーは加熱調理品の粗熱取りや急速冷却・凍結に使用されている。加熱調理品を急速冷却することで、菌の増殖温度帯を素早く通過させるため、安全かつ熱による食品劣化を抑え、料理のおいしさ・品質を保つことができる。
図1:おいしさ・品質、安全、効率
3.製品の技術的特徴
(1)電流保護機能付き加速冷却制御
■電流保護機能
単相100V機器は、一般的なコンセントに流せる電流値を15A以内に抑え運転させなければならない。
本製品でも同様に、冷却開始時の過負荷時にも電流を15A以内に抑えながら、急速に冷却することが必要となる。その為、本製品ではインバータ圧縮機を採用し、圧縮機の入力電流値を監視している。
冷却開始時などの過負荷時においても電流値が15Aを超えないよう監視し、電流値が設定値以上上昇する場合には圧縮機の周波数を抑え、電流値の上昇を抑制する電流保護機能を備えている。
図2:電流保護簡易構成図
■加速冷却制御(冷却加速・冷却維持)
一般的な冷蔵庫・冷凍庫などのインバータ圧縮機を用いる製品の場合では、扉開閉により一時的に庫内温度が上昇した負荷が高いときにだけ圧縮機の周波数を高め冷却する。
そして負荷の低下に合わせ扉開閉のない負荷が少ない状態では圧縮機の周波数を抑え省エネを図る。
ブラストチラーにおいては、食品をいかに短時間で冷却・凍結できるかが重要となる。
本製品では、冷却開始時は前述の「電流保護機能」により電流値を考慮しつつ冷却する。そして、負荷の低下に合わせて、周波数を高め冷却を加速させ、その後は、目的の温度までその冷却を維持する制御機能を備えている。
■保冷運転
「電流保護機能」、「加速冷却制御」にて目的の温度付近まで到達すると、圧縮機の周波数を抑え省エネを図る。
この「電流保護機能付き加速冷却制御」を用いることで、単相100V機種でも三相200V機種と同等の食品の短時間凍結を実現し、インバータ圧縮機を用いた省エネ運転を実現した。
当社三相200Vの製品と、本製品を比較した場合においても冷却時間は同等で、26.7%の省エネを実現している。
図3:消費電力量比較
(2)環境負荷低減
本製品では、ブラストチラーで多用されている冷媒R404A(GWP:3920)ではなく、低GWP冷媒R448A(GWP:1386)を採用し、環境負荷を65%低減。R448Aは無毒・不燃であり、安全性も高い。
図4:R404A,R448A のGWP比較
3.おわりに
本製品は、電流保護機能付き加速冷却制御を用いることで、従来では難しかった単相100Vで-40℃の凍結運転を実現することができた。電源条件を選ばないことで幅広い飲食店で導入が期待でき、お客様の業態転換のお役立ちができると考えている。
今日、省エネ性向上や省資源性(フードロス削減)など、地球環境保護への継続的対応が求められている。本製品にて得られた技術的知見をさらにブラッシュアップし、更なる技術革新を推進し、お客様の省エネルギー化、環境負荷低減に貢献していく。
以上
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