米国バイデン大統領 国防生産法とインフレ抑制法により ヒートポンプとクリーン・エネルギー関連機器の普及を促進~海外短信クローズアップ
No.687 2022年11月
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■ヒートポンプとクリーン・エネルギー機器を製造するために国防生産法(DPA)を発動
米国バイデン大統領は2022年6月6日、クリーン・エネルギー関連機器の国内生産を拡大するために、国防生産法(DPA)を発動した。クリーン・エネルギー関連機器は、(1)ヒートポンプ、(2)ソーラー、(3)断熱、(4)変圧器と送電部品、及び(5)電解装置、燃料電池、及び白金族金属の5つの分野をカバーしている。
大統領は国防生産法の下に民間企業に対して大統領令を発動し、連邦政府との契約を優先的に実行することを要求することができる。言い換えると、国防生産法によってバイデン政権は効果的にヒートポンプ製造業者に対してヒートポンプの生産を命ずることができ、政府は購入を保証することになる。国防生産法でカバーされたすべての機器は米国国内で製造されたものでなければならない。
国防生産法は米国のクリーン・エネルギーの独立性を高めながら、連邦政府のクリーン・エネルギー関連機器への投資を拡大し、機器の輸入と化石燃料への依存を減らすという二重の目的を持っている。
エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は「長いこと米国のクリーン・エネルギーのサプライ・チェーンは海外の供給源と敵対する国々に頼りすぎていた。国防生産法の下で新たにエネルギー省は国内のソーラー、ヒートポンプ、及び送電網の製造産業を強くする。これにより米国の経済安全保障を強化し、収入の高い雇用を創出し、同時に電力料金も下げる」と述べている。
更に6月13日に発表されたバイデン政権の計画では、2029年には室内ガス温風機の廃止を目指している。アメリカ合衆国国勢調査局の統計によると、4,700万以上の世帯で暖房に天然ガスの温風機を使用している。ガス温風機は年間に米国で使用される住宅用エネルギーの推定15%を占めているものと推定されている。ビルではすべての米国のエネルギー消費の推定40%を占めている。
クリーン・エネルギー関連機器に対する需要は、今後数年で急激に増加すると見られており、バイデン政権による国防生産法の発動は、米国がロシアやその他敵対国からの石油やガスの輸入に頼るのではなく、製造業が需要に対応するように設計されている。
■インフレ抑制法(IRA)によりクリーン・エネルギーにインセンティーブを付与
8月16日、インフレ抑制法(IRA)がバイデン大統領により署名され成立した。内容が広範囲な法であり、処方薬剤の原価を下げること、15%の最低法人税率の導入などの税制改革、及びクリーン・エネルギーにインセンティーブを提供することによる温室効果ガスの排出削減などが盛り込まれている。気候変動対策にこれまでの米国政府では最大である約3,700億ドル(約54兆円)を支出し、米国のクリーン・エネルギー産業を変革する可能性を持っている。
この予算の多くは税控除に用いられ、住宅所有者や事業主に対してクリーン・エネルギー技術への投資を促進するインセンティーブとして使われる。例えば、住宅エネルギー効率改善控除ではエネルギー効率の向上に要した費用の30%までを控除することができる。冷暖房用ヒートポンプの設置では8,000ドル(約116万円)まで控除できる。その他対象となるものは、電気パネルの更新、断熱及び省エネ型窓やドアの追加などが含まれる。住宅クリーン・エネルギー控除では、屋上のソーラーパネルの設置に対して10年間で6,000ドル(約87万円)の控除が認められる。電気自動車、ヒートポンプ温水器や暖房機などの省エネ機器も対象となる。低中所得家庭に対しても省エネ対策が手の届くものとするために、その地域での所得の中間値の80%以下の家庭に対してインセンティーブのレベルを高く設定する。
法の賛成者はこの法により2030年までに米国での温室効果ガスの排出を2005年レベルと比較して40%削減するのに寄与するであろうと主張している。インセンティーブに対する関心が高まっているため、産業のアナリストは電気自動車からソーラーパネル、ヒートポンプまで高効率エネルギー危機の供給不足を警告している。法はソーラーパネル、風力発電、及びバッテリーなどの機器の生産を増やすために米国の製造業者に税控除の枠を配分している。また製造設備に対する投資減税も配分している。また法は国防生産法の下で5億ドル(約725億円)をヒートポンプ製造業者に配分することになっている。
ヒートポンプ他のクリーン・エネルギー技術への
インセンティーブを与えるインフレ抑制法
〔出典:JARN August 25 及びSeptember 25, 2022〕
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