2021年度省エネ大賞
経済産業大臣賞 パナソニック株式会社

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No.682 2022年3月

製品・ビジネスモデル部門
人に寄り添う美肌うるおいシステム『給水フリー加湿&新ナノイーX』搭載エアコン


写真1:表彰状


写真2:トロフィー




1.はじめに

家庭で電力を多く消費するエアコンは、より一層高い省エネ性が求められてきているため、当社はこれまでも様々な省エネ技術の開発を行い、高いAPFの実現と、更に、AI技術を活用して、センサーの検知内容、運転履歴などを分析・学習し、運転を最適化していくことで、実使用環境下でも快適性と省エネ性を両立させるAI自動運転技術などを開発してきた。このように、快適&省エネを基軸としたエアコンを開発提供してきたが、昨今のコロナ渦における換気や清潔に対する関心と、エアコン暖房が日常化する中で暖房運転時の喉や肌の乾燥に対する不満感が高まってきている。そこで、本製品は、省エネ性をベースに健康快適空調の視点で、暖房時に無給水で部屋の加湿を行うことができる「給水フリー加湿」や、肌うるおい効果や除菌効果を有する「新ナノイーX」、独自の蓄熱デバイスを冷房にも展開した「エネチャージ快湿制御」、および部屋をキレイにする「換気」など、新しく開発した要素技術を搭載したエアコンを提案し、快適で省エネ、そして清潔・清浄な室内空間を提供することを目的とした。その特長について説明する。



写真3:換気・除加湿ユニット搭載の22LXシリーズ



2.製品の技術特長
■高分子収着剤を用いた高性能給水フリー加湿技術
従来のデシカント空調技術で良く用いられているゼオライトやシリカゲルのような無機系吸湿剤に比べて、①水分吸着量が大きい ②再生温度が低い ③脱離エネルギーが小さい などの特長を有する高分子収着剤を家庭用エアコン業界で初めて使用し、メンテフリーで暖房時の室内空間や肌の乾燥感を解消することができる給水フリー加湿技術を開発した。

特性の優れた高分子収着剤を添着・成形した加湿ローターを組み込んだユニット本体において、高効率な加湿を実現するために、加湿部と収着部の間で発生する風漏れや熱損失を最小限にする構成を考案した。回転している加湿ローターにおける漏れ損失を防止する代表的な構成として、①加湿部と収着部の間の漏れを防止するブラシシールメカ ②加湿ローターギア外周部の漏れを防止するラビリンスメカ を設けた。これらの損失防止構成によって、約19%以上の改善を行った。
これらの技術要素により、4.0kwクラスにおいて、加湿量810ml/h、消費電力1,220Wh(室外の乾球温度7℃、湿球温度6℃、加湿ホース4mの場合)と業界最高の給水フリー加湿性能を実現した。

エアコン暖房を行うと、通常、部屋の湿度は30%前後の低い状態になり、かなりの乾燥感が発生するが、本開発仕様の加湿運転を併用すると、一般的に快適な環境とされている湿度50%を、給水手間を必要とせずに実現することができる。このように、エアコン暖房時の大きな課題であった低湿度による乾燥感を解消できるという快適性向上と、無給水で加湿ができるというメンテナンス性向上の両立を図ることができた。



写真4:換気・除加湿ユニットの特徴



■OHラジカル量を大幅にUPさせたナノイー技術
除菌・脱臭効果に加えて、美肌・美髪効果を有する独自のナノイー技術の大幅な性能向上を実現した。ナノイーは、空気中の水分を凝縮させ高電圧を印加することで、OHラジカル(高反応成分)を発生するデバイスである。本開発品では、結露部と放電部の距離を短くし、ラウンドリーダー放電を形成することで、放電が多線(面)に広がり、OHラジカル量を大幅に増加させることができた。このナノイーを室内に送ることで、肌うるおい効果が発現する。そのメカニズムは、OHラジカルが、皮脂を親水化させることで、皮脂が肌をコーティング、肌表面の水分蒸散の低減により、肌の角質水分量が増加するものと考えられる。

加湿で室内空間を50%に維持している状態で、このナノイーを動作させると、肌うるおい効果が増加し、加湿だけで60%空間にいる場合と、同じ角質水分量であることが分かった。このように、ナノイーを併用すると湿度を10%低くしても同様の肌うるおい効果を得ることが出来るので、この加湿量を得るために必要なエネルギーを低減することができ、約35%の省エネ効果がある。



写真5:



■圧縮機排熱利用のエネチャージを冷房にも活用した快適制御技術
圧縮機からの排熱を蓄熱材に回収し、暖房運転時に発生する除霜運転時の霜を溶かす熱エネルギーとして利用する独自のエネチャージを、本開発品では、冷媒回路の見直しを行い、冷房時にも活用できるように改良した。本開発品では、冷房・暖房の主冷媒回路とエネチャージを通過するバイパス冷媒回路との分岐切替を行う三方電動弁の位置の変更を行うことで、冷房時も、エネチャージに蓄えられた熱エネルギーを利用することができるようになった。この結果、冷房負荷が小さい時の圧縮機の断続運転(ON/OFF)の発生を低減することができ、温度変動幅を1.3℃から0.2℃に、平均湿度を4%低い状態を実現し、冷房時の快適性の向上を図ることができた。また、この時、断続運転(ON/OFF)による損失が低減されたことで、約10%省エネ性が向上した。


3. おわり
2022年度モデル(CS-LX402D2)は、圧縮機・熱交換器等の独自技術や高効率送風回路の新搭載により、寸法規定タイプとして2016年モデル(CS-X406C2)以降、この22年モデルに掛けてAPF+0.3の省エネ性向上を実現した。また、室内機の樹脂部品にリサイクル材を採用しているほか、全社的に高循環型商品づくりに取り組み、「パナソニック製品環境アセスメント」に基づき事前評価を実施しており、リサイクル可能率では、製品本体85%以上を達成している。

今後も「健康・清潔」な空気の創出と、人の暮らしに寄り添った「快適」な空間づくり、そして商品の省エネ性の向上を図ることで、お客様と地球環境へ貢献したい。


以上

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