海外短信
No.682 2022年3月
過去の海外短信はこちらから
1.パナソニック インドネシアでインバータの生産を開始
パナソニック・マニュファクチャリング・インドネシア(PMI)は2021年11月16日、エアコン用インバータの生産を開始した。この生産ラインは、インドネシアのパナソニック・ゴーベル・ビジネス・グループを支援するために、パナソニック・マレーシアから移設したもの。インドネシア産業省は輸入品の35%を国内生産に代替するプログラムを推進している。
産業大臣はPMIのサポートを高く評価している。政府が最新の技術を国民に提供することができるためだ。同時にエネルギー効率の高い製品によりグリーン産業が活性化されている。
PMIのエアコン事業部は47年前の1974年に設立された。原材料から最終製品まですべて生産できるインドネシアで現在ただ一つのエアコン工場となっている。
写真1:PMIによるインバータ生産開始のセレモニー
〔JARN December 25, 2021〕
2.ダイキン インド南部に新工場を建設
ダイキンインドは、インド南部のアンドラプラデシュ州スリシティ工業団地に同社3番目となる生産工場を建設する。この拡張計画は最近公表された政府のエアコン部品の「生産連動型振興策」に応じた投資であり、日本企業ではこの計画の下での初めての投資となる。
9月24日、同社はスリシティで空調機と部品を生産するための土地の購入契約を締結した。同工場は、インド国内需要に応じるとともに、インドを海外市場への空調機供給の地域拠点として築き上げることにもなる。
同社は工場建設の第一期分として約100億インドルピー(約153億円)を投資する。30万平方メートル以上の土地を取得し、2023年までに操業を開始する予定である。
同社の会長兼最高経営責任者であるカンワル・ジート・ジャワ氏は、「インドを西アジア、スリランカ、南アメリカ、及びアフリカなどの市場に対する生産拠点としたい。インドは最も成長の速い市場である。我々は明快な戦略的意図の下に空調機、空気清浄器、及び冷凍機の事業を強化する。またインドをこれらに対する研究開発の拠点としても位置付けている」と述べている。
〔JARN, November 25, 2021〕
3.三菱電機 英国のスコットランド工場に投資 増加するヒートポンプの需要に対応
三菱電機エアコンディショニングシステムズ欧州は、英国スコットランドのリヴィングストン工場に1,530万ポンド(約24億円)の投資をする。生産能力の増強、生産性の向上、及び研究開発力の強化を図る。欧州及び英国で気候変動を抑制するローカーボンヒートポンプへの需要が増加していることに対応したもの。
同社の研究活動は、新しい低GWP冷媒および新素材の調査を含めて、スコットランドにおける次世代ヒートポンプ技術の開発をサポートする。
調査を基にして、同社は成果を将来の製品に反映し、環境への影響を減らした世界をリードする製品の製造を目指している。また一方で環境目標に合致し、CO2排出量ネットゼロを緊急に達成するために再生可能エネルギーの導入も図る。
2021年11月の初め、同社はスコットランド開発公社と覚書を結んだ。スコットランド開発公社は三菱電機の投資プロジェクトに広範囲な協力を実施する。三菱電機はこのプロジェクトに180万ポンド(約2億8千万円)の支援基金を拠出し、55人の新規雇用と既存の324人の雇用を維持するとしている。
〔JARN, December 25, 2021〕
4.三菱重工サーマルシステムズ オーストラリア「2022プロダクトレビュー賞」を受賞
三菱重工サーマルシステムズは2021年12月15日、オーストラリアで最も権威のある商品レビューサイトから「2022 ProductReview賞」を受賞した。家庭用セパレート型エアコン部門で2つのシリーズが受賞。オーストラリア市場での消費者レビューの詳細な分析によるもの。2つのシリーズは共に市場で高い評価を得たもので、昨年に続き2年連続しての受賞となった。
ProductReviewはオーストラリアで最も信頼性が高いオピニオンサイトである。商品やサービスについて実際に使ってみた経験や消費者の意見を提供している。受賞した商品シリーズは542のレビューで5点満点中で4.7を獲得し、セパレートエアコンでは最も高かった。またもう一つのシリーズも326のレビューで4.6と2番目の高い評価であった。
三菱重工エアコンデショナーオーストラリアの伊藤雄司社長は「当社の製品や活動はオーストラリアに最高の製品やサービスを届けたいという強い思いの表れであり、我々の顧客からこのような賞賛を得たことは、当社の使命をさらに後押ししてくれるものだ」と述べている。
〔JARN January 25, 2022〕
5.欧州ヒートポンプ販売 2021年200万台を超える
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)は、2021年がエネルギー転換とヒートポンプにとって決定的に重要な年であったと発表した。2020年、欧州市場は2019年と比較して7%と穏やかな伸びであった。2021年、市場は回復しただけでなく、25%という前例のないほどの増加率を示した。推定によると販売台数は200万台を超えた。
暖房機器の総販売台数700万台の中で、ヒートポンプは年間販売台数の25%以上を占めた。これは継続的な発展の確固たる基盤となるもので、 EUがエネルギーと気候の目標を達成することを可能にする。欧州委員会の2019年システム統合戦略では5,000万台以上のヒートポンプが2030年までに必要であるが、2021年の販売台数は、欧州市場はこの目標を達成するための軌道に乗っていることを示している。ヒートポンプが新築ビルに対して標準的な解決策に急速になりつつある。既存のビルに対しても、最新の技術を用いた改修と組み合わせた技術開発により、暖房機をヒートポンプに入れ替えることは、実行可能な選択肢となっている。
〔JARN, January 25, 2022〕
6.欧州F-ガス 順調に排出を削減 実績は規制値を下回る
フッ素化ガス(F-ガス)排出の大部分をHFCが占めている。これを削減するために、F-ガス規制No517/2014では欧州連合HFC削減計画と企業への割当システムを定めた。2019年からはまたモントリオール議定書キガリ改正によりEUはHFCの排出削減を国際的に義務付けられた。
F-ガスは気候変動の要因となっており、2019年にはEUの全温室効果ガス(GHG)排出の2.3%を占めている。多くの用途に使われているが、冷凍空調分野での使用が多い。ほとんどのF-ガスは他の温室効果ガスよりも地球温暖化係数(GWP)が大きい。
2015年から2019年まで排出量を着実に減らしてきたが、2020年にEUでのF-ガスの供給量が若干増加した。HFCの消費量は2020年に2019年と比較して7%ほど増加したが、キガリ改正で定められた最大消費量については52%下回っている。これはEUのHFC削減実績がまだ計画通りに進んでいることを示している。2020年にEUの市場に存在するHFCの量は市場の規制値を4%下回っていた。
使用できるHFCの割当量は需要を上回っており、空調機の輸入とヒートポンプ機器をカバーした割当許可量の貯留分は増加している。貯留分は現在2020年に輸入された機器に必要な量のほぼ7倍に達しており、これは2021年に割り当てられたHFCの最大量の111%に相当する。
〔JARN, January 25 2022〕
7.米国バイデン政権 キガリ改正の批准を連邦議会に要請
米国バイデン政権は2021年11月16日、連邦議会上院にキガリ改正の批准を正式に要請した。2016年に採択されたモントリオール議定書キガリ改正は、強力な温室効果ガスであるHFCの生産量・消費量を段階的に削減する国際的な取り決めで、中国とインドを含む129カ国で既に批准されている。上院で可決するには定員100人の内、2/3の賛成が必要となっている。
米国環境保護庁(EPA)は2021年9月に今後15年間でHFCの生産量・消費量を段階的に85%削減する規則をまとめた。キガリ改正の削減スケジュールに合わせている。EPA規則は2020年に米国革新製造法(AIM法)の一部として超党派の賛成を得ている。
キガリ改正の批准は環境団体のみならず商工会議所、米国製造業者協会(NAM)、及び米国冷凍空調工業会(AHRI)を含むビジネス団体からも支持されている。AHRIのスティーブン・ユーレクCEOは「我々はキガリ改正の早期批准を求めている。これにより米国企業は冷媒や機器の製造における技術的な優位性を固めることができる」と述べている。またAHRIは「改正を批准しないリスクは、ほかのマイナス影響に加えて、輸出先の批准しない国に対する規制により輸出市場を失うことだ」と強調している。
〔JARN, December 25 2021〕
8.欧州と米国 すべての有機フッ素化合物(PFAS)の規制に向かう
パーフルオルアルキル及びポリフルオルアルキル化合物(PFAS)は、社会で広く使われている数千の合成化学物質のグループであり、ある種のHFC及びHFO冷媒を含んでいる。炭素-フッ素結合があるため使用中及び環境に放出された後も分解されにくい。また多くのPFASは環境に容易に拡散し、放出された所からはるか遠くの地点でも検出される。PFASによる水質汚染及び土壌汚染が頻繁に起こっている。
米国環境保護庁(EPA)は、PFASに共通した一つの特徴は分解が非常に遅いことと報告している。PFASは人間、動物、及び環境に年月を経て蓄積される。科学的調査によると、高濃度のPFASに晒された場合、健康面での悪影響が指摘されている。
欧州においては2021年7月、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、及びデンマークの5か国が2022年7月までに欧州の化学品規制(REACH規則)に基づき欧州化学品庁(ECHA)にPFASの製造、販売、及び使用を制限する提案を提出する意向を表明した。
米国においても2021年6月、EPAが有害物質規制法(TSCA)によりPFASの報告と記録を要求する提案を行っている。また米国メイン州では2021年7月、すべてのPFAS製品の使用を禁止する州法が成立している。
〔JARN December 25, 2021〕
9.サウジアラビア SEERを採用したエアコンの新エネルギー効率基準を2022年から実施
サウジアラビア標準化公団(SASO)は、‘SASO2663:小形ウィンドタイプ及びシングルスプリットタイプについての最低エネルギー消費効率基準(MEPS)、ラベリング、及び試験要求’を2018年版から2021年版へ2022年に改正する。
新たな標準での最も大きな改正点は、これまでのEERに代えてSEERを採用したこと。新しい版ではサウジアラビアでの外気温度毎の発生時間などSEERの計算方法を示している。また一定速機を除いてすべての対象とするエアコンについてSEER値を求めるために試験を要求している。
SASO2663:2021では対象となる小形ウィンドタイプ及びシングルスプリットタイプを、SEERに応じてAからGまでエネルギー効率別にクラス分けている。新しいラベルにはこのクラスが表示される。
このシステムは2021年11月1日からスタートしている。SEERによる新たな申請を受けており、既存の申請についてはEERからSEERへの変更を要請している。
写真2:SASO2663:2021 エアコンのSEERによるエネルギー効率区分
〔JARN, December 25, 2021〕
10.ロシア政府 ビルへのヒートポンプの設置を奨励
ロシア政府は2021年10月29日、2050年を目指した低炭素開発戦略を承認した。ヒートポンプ、その他太陽熱集熱器、太陽光発電パネル、排水熱回収ユニット、バイオガス製造に供される生ごみ処理機など、再生可能エネルギーを用い、また、生み出すものを建物に備えることに対して奨励金を与える。
この戦略の目標に集中した計画を遂行する方策の一つとして、給湯・暖房システム、住宅用機器、照明システムについてエネルギーの高効率化と旧型機から新型機への入れ替えが提案されている。またスマートエネルギー管理機器が導入されている。
強化したシナリオでは、2050年には温室効果ガスの排出をネットで2019年レベルと比較して60%削減し、1990年レベルと比較すると80%削減することになっている。
〔JARN, December 25, 2021〕
11.中国 炭素の排出削減を徹底して実施
中国の国務院機関事務管理局、国家発展・改革委員会、財政部、及び生態環境部が共同で最近‘炭素の排出ピークを減少させるために低炭素パイオニア活動を徹底して実施する実行計画’を発表した。
計画ではいくつかの方法を奨励している。
① 石炭燃焼、石油又はガスボイラーに替えて、空気-水(ATW)、水熱源、地中熱などのヒートポンプ及び電気ボイラーを採用する、
② 冷凍機器を改善する、吸収式直接燃焼空調機を徐々に電気エアコンに置き換えるなどにより直接的なCO2排出量を減らす、
③ 太陽エネルギー、地中熱エネルギー、バイオマスエネルギーの利用促進、ヒートポンプ技術の促進、建物暖房、給湯の需要への取り組み、及びヒートポンプ暖房(冷房)地域を2025年までに1000m2に広げる。
またヒートポンプによる暖房(冷房)面積を2025年までに1000万㎡増加する。これらのすべての方法は連携して環境に優しい 高効率な冷凍に関する新たな取り組みを構築する。これは、レトロフィット、スマートマネージメント、コントロールの最適化、室温設定の適正化、外気冷房などエアコンシステムでのエネルギー節約に焦点を当てることによりさらに強化されるとしている。
〔JARN, January 25, 2022〕
12.中国 電力消費の「二重規制」により機器の価格が上昇
中国の家電機器が、材料コストの上昇に加えて、エネルギーの「二重規制」の影響により、全般的に値上がりしている。これは製造業者が長いことさらされてきたコスト圧力をある程度緩和するものとなった。
エアコン、冷蔵庫、洗濯機、台所用品、及び 小型家電機器など多くの家電製品が値上がりしてきており、中国での家電製品の平均価格は10月1日に記録的な高さになった。
原材料の価格上昇はこれまでも家電製品の価格を押し上げてきた。しかし、今回の価格上昇は「二重規制」による電力供給制限に起因するものであると考えられる。
「二重規制」は電力や石炭などのエネルギーの総量を規制するとともにエネルギーの消費効率も改善するもので、環境に配慮した近代化、資源問題の解決、及び環境汚染の抑制に対する重要な措置となっている。
エネルギーの「二重規制」は製造業に電力の大きな供給不足を招いた。製造業が集まった地域では2021年の前半から電力供給を管理している。広東省のある空調機メーカーは生産ラインを通常通り稼働させるために発電機を購入しなければならなかった。生産量が大幅に減少し、エアコンの供給不足が懸念されている。
〔JARN, November 25, 2021〕
過去の記事
■2021年11月号(No.680)はこちら
■2021年 9月号(No.679)はこちら
■2021年 7月号(No.678)はこちら
以上