海外短信
No.680 2021年11月
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1. ダイキン ブラジルでR32エアコンの生産を拡大
ダイキンブラジルは2021年8月6日、ブラジルアマゾナス州マナウス市のマナウス工場の取得15:42:48を発表した。R32エアコンの全面生産を準備すると共にブラジルでの将来の事業拡大を目指す。
ダイキンブラジルはマナウス工場と周辺用地を取得
ダイキンマナウス工場は住宅用と9,000BTU/h(2.6kW)から48,000BTU/h(14.1kW)の中小型業務用エアコンを生産している。生産用地としての45,000㎡に加えて、ダイキンは今回、将来の生産と物流双方の拡張に備えて、周辺の土地も含めて合計90,000㎡の土地を取得した。
ブラジルでダイキンは今年5月にR32エアコンを発売した。このエアコンを生産するために工場は最近、生産ラインの改良を図った。数年の内に現地で生産するエアコンをR410AからR32へ転換することを計画している。
ダイキンブラジルの社長であるロベルト・イー氏によると、工場の取得はダイキンブラジル社の創立10周年記念の施策の一つであり、サンパウロでのダイキン・トレーニング・センター、また2019年にポルトアレグレ、リオデジャネイロ、ブラジリア、及びレシフェの支店でのショールームの開設といったブラジルでの投資の継続のひとつである。」と述べている。
〔JARN, September 25, 2021〕
2.三菱電機トレイン海外事業部 バーチャルショールームを開設
三菱電機トレイン空調冷熱販売米国(METUS)は2021年7月29日、住宅向けの空調機とヒートポンプ製品の対話・没入型のバーチャルショールームの開設を発表した。ショールームにより、METUSの海外販売地域-メキシコ、中央アメリカ、バミューダ、南アメリカの一部地域及びカリブ海-の販売店、設備工事店、及び消費者は、様々なインバータ技術を遠隔で実機と同様に360度の方向から閲覧することができる。
METUSバーチャルショールーム
METUSは、現地へ行くことなく費用も掛けずに空調機の購入が早くできることをめざして、ビヨンドXRデジタルエージェンシーとバーチャルショールームの構築作業をしてきた。「バーチャルショールームのアイデアは、販売を促進し製品説明を詳しくできるものとして、新型コロナウイルスの感染拡大中に浮かんだものだ。顧客には基本的な製品情報と製品のラインアップを知ってもらいたい」とMETUSの海外事業部住宅用販売のジーナ・レリア氏は述べている。
サイトの訪問者は、バーチャルショールームを閲覧して、製品を近くで見て、カタログをダウンロードし、新製品のビデオを見ることができる。またライブチャットにより対話が可能で、eメールにより販売店からの情報も得ることができる。
〔JARN, August 25, 2021〕
3. 欧州 2030年までに温室効果ガスの排出を55%削減
EPEEは高い目標を歓迎
欧州委員会は2021年7月14日、1990年比で2030年に温室効果ガスの排出を少なくとも55%削減する。このために、欧州の気候、エネルギー、土地利用、輸送、および課税についての政策パッケージ「Fit for 55」を採択した。
冷暖房セクターに関連した内容としては、ビルからの排出削減が不足していることに対応して、欧州の排出権取引とは別の新たな排出権取引システムが、ビルの燃料消費について準備されている。新たなシステムでは、炭素価格が燃料の売買価格に付加される見込みである。これにより更にエネルギー節約型の冷暖房機器へのシフトを促進する。新たなシステムは2025年に開始され、2005年比で2030年に43%の排出削減が期待されている。
また再生可能エネルギー指令では2030年までにエネルギーの40%を再生可能エネルギーとする高い目標を設定する見込みであり、欧州各国は輸送、冷暖房、ビル、及び産業について、再生可能エネルギーの使用比率の目標を設定することになっている。
欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE)は7月9日、「Fit for 55」について、エネルギー効率と再生可能エネルギーの高い目標として歓迎するコメントを発表した。
〔JARN, August 25, 2021〕
4.欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE) 新たな環境モデルを発表
‘HFCを段階的に削減しながら、エネルギーを効率的に使用
欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE)が2021年7月15日にオンラインセミナーを開催した。タイトルは‘HFCを段階的に削減しながら、エネルギーと資源を効率的に使用する方法。新しいモデルによる政府支援’。国連環境計画のモントリオール議定書第43回作業部会の一環として実施された。
オンラインセミナーではモデリングによる結果が発表され、試行した国々が成果を共有した。例えばボスニア・ヘルツェゴビナにおけるHFCアウトルック・モデルの使用が紹介された。HFCアウトルック・モデルはもともとEUにおけるHFCの使用をモデル化するために開発されたもので、発展途上国で採用されてきた。このモデルを使用して、ボスニアは施策に優先順位を付けた。スーパーマーケットの冷凍装置でのR404Aの使用は削減すること、急激に伸長している空調マーケットで据えつけられる新規の空調機には低GWP冷媒を使用すること、また冷媒の回収と再使用を適正に行うことを早期実施項目として決定した。
オンラインセミナーには海外の協会の代表や冷凍空調産業の主要なメーカーなどから約80名が参加した。
〔JARN August 25, 2021〕
5.英国ヒートポンプ協会 新たなトレーニング・コースを導入
英国のボリス・ジョンソン首相が2020年11月に発表した「グリーン産業革命」では、10項目の計画のひとつとして、ヒートポンプを2028年まで毎年60万台設置するという目標を掲げている。これにより、2050年温室効果ガスの実質排出ゼロに向けて歩みだすと共に雇用を創出する。
英国ヒートポンプ協会(HPA)が導入した新たなトレーニング・コースでは、暖房産業に従事する人々に対して、この目標を認識させ、英国の数十万戸の住宅が低炭素暖房を据えつけるために必要なスキルを身に着けさせる。
新しいコースは英国に散在する38か所のトレーニング・センターで受講することができ、HPAの会員だけで毎年最大4万人以上の据付作業者を訓練することができる。
コースはHPAの役員会員である三菱電機、ナイブ、パナソニック、サムスン、ボッシュ、また一般会員であるバクシ・ヒーテヒィング、ダイキン、アイデアル・ヒーテヒィング、バリラントから提供を受けている。
〔JARN September 25, 2021〕
6.欧州 2020年末迄に累積ほぼ1,500万台のヒートポンプを設置
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)のデータによると、2020年末迄に、累積合計1,484万台のヒートポンプ機が欧州21か国に設置された。2020年は前年に対して6%、160万台の増加となっている。2020年の販売台数の上位3か国はフランス394,000台、イタリア233,000台、及びドイツ140,000台。この3か国で2020年の全販売台数の48%を占めている。スペイン、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、ポーランド、及びオランダが続いており、これらを含めた上位10か国で年間販売台数の87%を占めている。その他の欧州各国の市場も伸長が期待されており、欧州市場全体では2021年から再び成長軌道に戻って2桁の伸びも可能と見込まれている。
各国は益々強い対策で暖房分野でのエネルギー転換に取組んでいる。EUはこれに対して戦略を提示してきた。政策では2030年には住宅の40%、業務用ビルの65%の暖房エネルギーが電力になると予測している。これはビルの大部分がヒートポンプシステムで冷暖房されることを意味している。技術的な進歩と好ましい方針により、この発展は持続され、冷暖房の完全な脱炭素化を実現することになろう。
2020年欧州国別ヒートポンプ販売台数(千台)
〔JARN, August 25 2021〕
7.インド政府 モントリオール議定書キガリ改正を批准
ナレンドラ・モディ首相率いるインド政府は8月18日、HFCの段階的削減を追加したモントリオール議定書キガリ改正を批准した。インド政府は国としての削減スケジュールを2023年までに産業界と協議の上決定すると述べている。インドは2032年に10%、2037年に20%、2042年に30%、そして2047年に80%と4段階でHFCの削減を図るものと見られている。
インドはこれまでインド・クーリング・アクション・プラン(ICAP)を実行してきた。これはHFCを段階的に削減し、冷房の負荷も減らすというキガリ改正を具体化したものである。ICAPは2019年に発表されたもので、2037年までに冷媒の需要を25%から30%減らし、2022年から2023年までにサービス技術者10万人を訓練し認定することにしている。
実行戦略として、政府は「既存のオゾン層破壊物質規則を改正するには2024年の半ばまでかかる。HFCを生産し、また消費していた産業はHFCを段階的に削減しなければならない。また非HFC・低GWP冷媒への転換を図らなければならない」と述べている。
政府は、段階的削減により国内生産品と代替技術の市場拡大が期待できる。次世代の代替冷媒と関連技術について国内での革新を育成する機会となりうるとしている。
〔JARN, September 25 2021〕
8.インド冷凍空調製造業者協会 海外の部品メーカーにインドでの
現地生産を呼びかけ
インドの産業団体である冷凍空調製造業者協会(RAMA)が海外の部品メーカーに対してインドでの現地生産を呼びかけている。JARN誌の読者に対するメッセージの中で、インドの市場はこれから大きく成長する潜在力を持っており、現在は小さいが、今後数年で大きく伸びると述べている。メッセージは次の通り。
“空調機の販売は年間約700万台と現在は小さいが、今後数年で大きく伸長する。2029年にはインドから海外に輸出する空調機の台数は世界の輸出の15%、金額では45億ドル(約5,100億円)になると予測している。現地調達比率も25%から75%に上昇する。”
“我々の産業はさまざまな政府部署と協業して、空調機の輸出生産に焦点を当て着実にインフラを拡充してきた。政府もインドを輸出のハブとすることについてはとても熱心だ。多くの製造業者も既に生産能力を増強しているが、空調機の部品の大多数はまだ中国、マレーシア、ベトナム、台湾、韓国、タイ、及び日本から輸入している。”
“部品の供給業者に対してインドに投資させるためにインド政府は生産連動型優遇策(PLI)を導入している。製造業者は生産増加額の4%から6%をインセンティーブとして受け取る。インドの製造業者は大きな関心を寄せており、インドを空調機の輸出ハブにしようとしている。”
〔JARN, August 25, 2021〕
9.インド 産業用ヒートポンプの市場予測レポート
“2021年から2027年まで年平均成長率13.6%”
世界的な市場調査会社であるリサーチ・アンド・マーケット社が、レポート“2021年から2027年までのインドの産業用ヒートポンプ:タイプ、能力、コンプレッサー、運転温度の制限、産業用途、テキスタイル、化学、その他”を発行した。
レポートによるとインドの産業用ヒートポンプの市場規模は、2021年から2027年の間に年平均成長率13.6%で伸びると予測している。2017年から2019年の間は、産業界がエネルギーコストを下げる努力をしたことと、産業プロセスからの大規模な炭素の排出によって環境への影響があったことにより、穏やかな伸びであった。
産業分野でヒートポンプを設置することが、エネルギーを節約し、炭素の排出を減らす実行可能なオプションとして現れた。また“インドで製造”などの政府の計画や方針がインドの製造業者を活気付けた。これにより産業用ヒートポンプの需要を喚起することにつながった。さらに産業界はコスト効率とエネルギー効率の高さを強調しており、炭素の排出削減の努力を図っている。今後数年のうちに医薬品、化学、食品および飲料などの分野で産業用ヒートポンプの需要が高まるものと予測している。
〔JARN, September 25, 2021〕
10.インド 100ヘクタールのメガフードパークが完工
インド北部のウッタル・プラデーシュ州産業開発局(UPSIDA)が、州北部バレーリ近郊のメガフードパークでのインフラ建設を完工した。100ヘクタール(1k㎡)のメガフードパークは食品加工産業の投資機会であり、コールドチェーン産業を盛り上げるものとなっている。さまざまな企業が土地の予約をしている。メガフードパークには集荷センターが設けられる予定であり、農産物生産者はメガフードパークの企業に農産物を販売することができる。
メガフードパークの特徴は農家と市場を結びつける仕組みにある。農業生産者、食品加工業者、冷凍物流業者、および販売業者が一同に会して、付加価値の最大化を図り、食品ロスを最少とし、農業生産者の収入を増加し、特に農村地帯での新たな雇用機会を創出しようとしている。スキームはクラスター・アプローチに基づいており、最新のサポート・インフラの設置を考えている。よく整備された農産物と園芸品のゾーン、産業パークに設置された最新の食品加工機械、温度管理がしっかりしたサプライチェーンが集積し組織されている。
〔JARN, September 25, 2021〕
11.中国 VRF堅調な伸び
中国のVRF市場が年々回復してきている。第一四半期での年率100%を超える高い伸び率と比較して、4月は落ち着いた伸び率となった。
チャイナIOLの統計によると、2021年4月の業務用エアコンの売上高は118億8千元(約2,123億円)、前年同月比年率26.7%の伸びとなった。この内、VRFは68億8千元(約1,224億円)、年率31.8%の伸びであり、業務用エアコンの中で最も高い伸び率となった。国内販売が主であり、業務用エアコンの4月の国内向けの売上高は107億8千元(約1,918億円)であった。VRFの国内向けの売上高は65億24百万元(約1,161億円)で前年同月年率34.2%の伸びであった。急速に拡大しているインフラ建設の恩恵を国内市場は受けており、また住宅市場も徐々に回復してきている。これがVRFに新たな潜在的成長力をもたらしている。
プロジェクト建設と流通も含めて、不動産市場が新型コロナウイルスの影響から回復してきている。新たなスマートビルの需要が高まっており、これにもVRFが採用されている。
〔JARN, August 25, 2021〕
12.中国 コールドチェーン産業の市場規模2020年に2,000億元(約3兆6千億円)を突破
チャイナIOLによると、コールドチェーン産業の市場規模が2020年に2,084億元(約3兆7,074億円)に達し、初めて2,000億元(約3兆5,580億円)を突破した。年率5.1%の伸び率となっている。
冷蔵庫、冷凍庫、及び冷水器などの家庭用冷凍機器の市場規模が2020年、1,426億元(約2兆5,369億円)となった。69%の市場構成比となる。冷蔵庫と冷凍庫の販売台数は1億2,167万台となり、前年より17%の伸び率であった。これは過去10年間で最も高い伸び率。過去5年間の年平均伸び率は3.8%となる。
産業用冷凍は2020年、最も小さい市場構成比3%となった。過去5年間の年平均伸び率は3.5%。過去数年間開発を続けたことにより、産業用冷凍は品質が向上し、現在では比較的安定した成長を続けている。2020年の市場規模は63億元(約1,121億円)で前年より5.8%の増加であった。
業務用冷凍は、過去5年間は大きな伸びを示したが、2020年の市場規模は576億元(約1兆249億円)、販売台数は1,459万台であり、前年よりの伸び率はわずか1.6%であった。伸びが小さかった理由は、新型コロナウイルスによる影響が大きく、特に小型冷凍機器の分野では小売店やケータリング産業が大きな打撃を受けたため、小型冷凍機器の需要が落ち込み、急速に伸び率が縮まった。
〔JARN, August 25, 2021〕
過去の記事
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