海外短信クローズアップ
No.676 2021年5月
インドネシアでエアコンが不足
日本メーカーはインドネシア政府に輸入規制の緩和を要求
インドネシア商業省(MOT)は2020年8月28日、3馬力以下のルームエアコンに対する輸入規制を強化した。それから5か月以上たった2021年2月初め、JARNはインドネシアにエアコンを輸出しているブランド数社にインドネシアのRAC輸入規制が市場に与える影響についてインタビューした。
空調産業はインドネシア政府に対してすべての輸入規制の緩和を要望
2020年8月の終わりに突然実施された規制では、インドネシアに規制対象エアコンを輸入する業者は、向こう1年間の輸入計画書をMOTに提出し承認を得なければならない。規制が施行されると空調機メーカーはすぐ輸入計画書をMOTに提出した。しかし9月、10月と許可は下りなかった。11月になってようやくMOTからの承認を得ることができたが、実際に認められたエアコンの輸入台数はメーカーが申請した数量のわずか数パーセントであった。
この難局を打開するために、日本のRACメーカーはジャカルタ日本大使館とジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)の商工会議所法人部門と共同して小委員会を発足させた。3つの組織は連名でMOTに書簡を送り、インドネシア市場における規制による悪影響を述べて規制緩和を要求し、現地生産の代替として冷媒を未充てんでエアコンを輸入することを提案した。何日もこの手紙に対する回答は無かったが、2021年1月14日になって日本側の提案によりMOTと輸入規制についてのオンライン・ミーティングが開催された。ミーティングで日本の関係者はMOTの責任者から日本のメーカーに限らずすべてのメーカーに対して空調機の輸入規制を緩和するとの声明を受け取った。特にメーカーは初回の輸入割当数量を終えても2回目の輸入申請をできることになった。2回目の申請が受理された後は速やかに数量許可が行われるものとされた。
しかしこの緩和措置は数量許可の発行に限定されており、輸入許可数量は各メーカーが申請した数量の多くても25%から50%に限定される模様となっている。エアコンの輸入規制はインドでも行われているが、規制対象となるエアコンでも冷媒が未充てんであれば輸入は許可されている。これに対してインドネシア政府はこのような除外を一切認めないため、多くのセパレート型のエアコンメーカーは従来と同様にプリチャージしてエアコンを輸入している。その結果、RACを販売しようとしても数量の確保ができないため、販売を拡大することはできない。
JARNの最新データでは、インドネシアの2020年のRACの市場規模は200万台を超えるものと推定される。日本及び韓国メーカーが多くを占めており、中国メーカー及び現地メーカーは残りを占めているに過ぎない。この輸入規制は低品質製品を締め出す目的であるとされているが、一方で現在わずかな数量に留まっているRACの現地生産を促進する狙いがあるとされている。
現地生産を増やしたいという政府の意図にもかかわらず、インドネシアの部品供給ネットワークはまだ十分に発達しておらず、いくつかの企業は現地生産に慎重な姿勢をとっている。タイ、マレーシアなどの東南アジアではエアコンの生産拠点を確立しており、現在ではベトナムもこれに加わっている。しかしインドネシアに生産工場を設立しようと前向きに検討している企業は少ないようだ。
インドネシアのエアコンの総需要は2018年がピークであり、それ以来減少している。JARNのデータによると、2020年の総需要は前年よりも約20%減少している。この需要の減少はメーカーが現地生産の検討に気が進まない要因のひとつになっている。このようなネガティブな要因が多い中で現地生産を増やすためには、セミノックダウンのようなコストを掛けない生産方式を採用する必要があり、インドネシア政府が関税を廃止した場合への予防措置をとっておく必要がある。
いずれの場合においても、短期間にインドネシアでの現地生産が増加することはなさそうである。2020年12月23日にMOTの新大臣に就任したムハンマド・ルトフィ氏は、関係する部署に輸入許可申請の処理の迅速化を指示した。また輸入割当は2021年1月末に大幅に拡大されたという情報もある。しかし空調産業界はできるだけ早くすべての輸入規制の撤廃を望んでいる。