海外短信
No.676 2021年5月
1.コンテナの不足がエアコン輸出のボトルネックに
COVID-19の影響は、エアコンの生産だけでなく、世界的な物流にも及んでいる。コンテナの不足が世界中でより深刻な問題となってきており、たとえ需要があったとしても物流がそれを満たすことができない状況になっている。このコンテナ不足は、ますますグローバル化している冷凍空調産業市場に大きな影響を及ぼしている。
世界的なすごもり経済がコンテナ不足にも影響
中国やその他アジア地域からの輸出の増加に伴い、輸出に必要となるコンテナの不足が2020年の半ばから問題になってきた。中国、韓国、その他のアジアの輸出業者は空コンテナを確保するのに忙殺されている。米国、欧州、及びオーストラリアなど主要な輸入国では直面する労働力不足が輸入貨物の仕分けを困難にさせており、加えて工場によっては一時的に閉鎖されているため、多くのコンテナが港に停滞している。
中国コンテナ産業協会(CCIA)によると、輸出コンテナの3基に1基しか中国に戻ってこない。これまでほとんどのコンテナは通常60日以内に中国に戻ってきていたが、現在では100日を要するという。北米では100のコンテナの内、60のコンテナは滞留してしまうと報じられている。
コンテナ不足が解消されないため、世界的に輸送コストが上昇している。2020年末において海上輸送の費用は中国から西側諸国へ、また米国東海岸へ輸送する場合、2019年と比較してそれぞれ208%と110%にまで上昇している。
〔JARN March 25, 2021〕
2.ダイキン インドのエアハンドリングユニットのメーカーを買収
ダイキン・エアコンディショニング・インドは、エアハンドリングユニット(AHU)のインドにおける主要メーカーであるシチズン・インダストリーズの株式を100%買い取った。シチズンの本社は西インドのアーメダバード。シチズンはアーメダバードにある5,000㎡の工場でAHUを生産しており、南インドのベンガルール(バンガロール)にも工場を持つ。毎年2万5千台のAHUを生産しており、売上高は10億8千万INR(インド・ルピー)(約15億7千万円)に達する。
ダイキンは現在北インドのニムラナに2つの工場を持っている。
〔JARN March 25, 2021〕
3.フランス HFCへの課税を延期
気候変動を抑制するためフランスでは、2019年に作成された法案で2021年1月1日からHFCに課税することを目論んでいた。狙いは企業が欧州規制を達成し、できるだけ早くHFCの消費を削減することにあった。法案を作成する間、フランス政府は冷凍空調産業界と協議を重ねた。これにより欧州の目標を上回るHFCの削減方法がまとめられた。最初の成果は設定された目標を2019年に達成したことであった。2021年に実施される予定のHFCへの課税は効果的であり、フランスの野心的なHFCの削減目標は達成が見込まれるものとなった。この結果、法案は修正され、HFCへの課税時期は2023年1月1日へと延期することとし、現行のHFC削減の方法を継続するために、欧州規制の内容にそっての禁止措置、また低GWP採用の加速などが準備された。
フランスの冷凍空調産業界は2020年6月に会合を持ち、当初2021年1月1日に施行が予定されていたHFCへの課税について協議した。その結果、将来において課税は不要であり、実施すべきではないと考えるに至っている。
2020年12月29日に発効された2021年法案では、HFCへの課税の適用は2023年1月1日まで延期された。大臣はもし冷凍空調産業界がHFCの削減を続けるのであれば、将来HFCへの課税は不要になるであろうと述べている。
〔JARN February 25, 2021〕
4.フランスにおける冷媒の動向
フランスの冷凍空調協会(Uniclima)の最新のデータによると、空気熱源ヒートポンプ(ATA)に使用されている冷媒の大部分はR32であり、暖房給湯ヒートポンプ(ATW)においても割合は少ないが、R32が徐々に採用されている。
Fガス規制No.517/2014により2021年1月1日からはHFCの割当許可量が18%ポイント段階的に削減された。低GWP冷媒への移行が勢いを増している。
2020年フランスでは81万1千台以上のATAが販売され、この内の84%がR32であった。GWP675のR32がGWP2,090のR410Aを代替していっている。
ATWヒートポンプ市場では、R32が増えてきているがまだ2020年に17%であり、R410Aが82%を占めている。残りの1%はプロパン(R290)などの冷媒となっている。
チラーではGWPが150以下となる新しいハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒がスクリュー圧縮機を使用した大容量機に使用されており、2020年に15%の構成比となっている。R32などGWPが150から750の冷媒はスクロール圧縮機を使用して中容量機から大容量機に徐々に使われている。しかし、2020年に販売されたチラーの80%はGWPが750以上の冷媒を使用している。
ATA市場ではR32が主流になってきており、R32など低GWP冷媒への移行は顕著なものとなってきている。しかしR32が主流となっているのはまだATA市場だけであり、その他のセグメントではまだ大きな割合を占めるには至っていない。
〔JARN March 25, 2021〕
5.フィンランド 好調な販売を持続するヒートポンプ
2019年フィンランドではヒートポンプの販売が好調であった。その後COVID-19の流行に見舞われたが、2020年も販売は伸びを持続した。2020年には6億ユーロ(約780億円)以上が投資され10万台以上のヒートポンプが設置された。フィンランドではこれまで累積100万台以上のヒートポンプに合計60億ユーロ(約7,800億円)が主に住宅所有者により支払われている。ヒートポンプは年間約12TWhの電力量を消費しており、この数値は上昇している。これはフィンランドにおける住宅とビルの暖房に要する電力量の15%以上に相当する。2020年に石油暖房システムを買い替えるために補助金が出たことにより販売は増加し、特に暖房給湯ヒートポンプ(ATW)が伸びた。ATWの伸び率は年率25%であった。
フィンランドヒートポンプ協会(SULPU)の統計によると、2020年のヒートポンプの販売台数は10万2千台であり、年間伸び率は4%であった。内訳は空気熱源ヒートポンプ(ASHP)が8万台以上を占めており、残りは地熱ヒートポンプ(GSHP)が9千台、暖房給湯ヒートポンプ(ATW)が8千台、排熱利用ヒートポンプが3千5百台であった。
フィンランドでは12万戸から15万戸の住宅で石油暖房をおこなっており、ヒートポンプの潜在的な需要は大きい。
〔JARN March 25, 2021〕
6.米国暖房冷凍空調工業会 2021年の国際課題を討議
米国暖房冷凍空調工業会(AHRI)の国際委員会(委員長リーム・マニュファクチャリング社首席法務担当スコット・ベイツ氏)は2月16日、オンラインで委員会を開催し、最近の貿易と関税の問題及び2021年の国際的な取り決めを見直し、2021年の戦略的優先課題を取りまとめた。
AHRIは米国新政権に対応していくつかの新たな活動をフォローしている。まだ決定とはなっていないがひとつのテーマはバイデン大統領の貿易方針であり、貿易と関税問題に係わる新たな担当官が大統領から任命された場合、AHRIは実行計画を提案することにしている。会員企業に影響を与えるほかの主要なテーマとしてはバイデン政権におけるキガリ改正の批准である。これは気候変動に関連した大統領令に含まれているものである。キガリ改正の批准が上院に提出された場合に67票の賛成が得られるように上院議員に対して働きかけを始めている。
〔JARN March 25 2021〕
7.中東および北アフリカでミニマムSEER設定の動き
外気温度が高い国々の空調機は、ほかの機器と比較するとはるかに多くの電力を消費しており、エネルギー消費全体の70%を占めている。これまでエネルギー効率評価の最低要求値の制定に焦点が置かれてきており、さらに徐々にその数値を上げている。最近、サウジアラビアはエネルギーの消費、評価及び監視を次のレベルに移行させた。
サウジアラビア標準化公団(SASO)は空調機の性能評価手法としてSEERの導入を検討している。
米国暖房冷凍空調工業会(AHRI)の中東および北アフリカ(MENA)チームは1月11日に地域産業グループミーティングを開催し、近く予定されているSASO標準2663の改訂について協議した。この改訂にはSEERが盛り込まれることになっており、2021年末までに発行される予定になっている。当初の草案ではSEERのミニマム要求は含まれていなかったが、すべての製造業者は製品のエネルギーラベルにSEERを表示する必要があり、また既存のミニマムEER要求を遵守する必要がある。SASOはこの標準を将来発行するときにはSEERのミニマム要求値を標準に組み込むものと見られている。
〔JARN February 25 2021〕
8.中国政府 クリーン暖房のために北部地域で補助金を支給
中国財政部は大気汚染防止のため2021年に予算化した基金の早期執行を通知した。通知によって、対象とされる中国北部の試験都市での2021年の冬季クリーン暖房用試験的助成金の総額が73億4千元(約1,220億円)であることが明らかになった。
2017年から中央政府は冬季のクリーン暖房の試験都市として43の北部都市を選定し、これを3組に分けた。最初の組の12都市では2019-2020年の暖房シーズンが終わったことにより、3年間の実証が終了した。2021年に予算化した都市は、現在実施中の実証期間に対応したもので、主に河北省、山東省、河南省、及び陜西省の31都市が含まれている。
通知は、農村地域において機器を改修した後、長期的にクリーン暖房を実施するために、当該州は実際に行われているクリーン暖房、農村地域の住民の実際の収入レベル、財政的な余裕、そして継続して改善していくことを考慮することとし、その上で大気汚染防止のための施策を実施しなければならないとしている。
大気汚染防止及び管理のための基金は、農村地域のクリーン暖房のための補助金として支給される。農村地域の住民は貧しいため、クリーン暖房を経済的に実施できることが強調されている。
〔JARN February 25, 2021〕
9.中国政府 クリーン暖房促進のために493億元を投資
中国国務院新聞弁公室は2020年12月21日、‘中国における新時代のエネルギー開発’と題する白書について記者発表をおこなった。白書では、北部地域でのクリーン暖房は大きく進歩発展した。都市と農村部の住居においてエネルギー消費と生活環境に改善が図られた。2019年末において北部地域でのクリーン暖房の面積は116億㎡に達し、2016年から51億㎡増加した。またクリーン暖房の割合は55%となり2016年よりも21%ポイント増加したと述べている。
北部地域で冬季のクリーン暖房を促進するにあたり、中国はクリーン暖房についての方針とシステムを継続的に改善してきた。実行にあたっては次のことに焦点を当てている。2017年から2021年の間で冬季のクリーン暖房計画を立案すること。毎年冬が始まる前に慎重にクリーン暖房を採用すること。中央政府の経済援助のもとに試行プロジェクトを実施すること。
このパイロットプロジェクトは3組43都市を支援し、493億元(約8,220億円)の投資をしてきた。
中国は一貫して石炭からガスへ、石炭から電力へのプロジェクトを促進しており、バイオマス燃料、地熱エネルギー、ソーラー暖房、そしてヒートポンプ技術の応用を支援している。これにより北部の農村地域では合計2,300万戸の住宅で石炭暖房をクリーン暖房に置き換えている。
〔JARN February 25, 2021〕
10.中国 VRF販売は2020年に年率2%とわずかながら増加
aircon.comの統計によると、VRFシステムは2020年、前年と比較して2%とわずかながら増加となった模様である。2020年の前半はVRFの販売は前年同期と比較して10.0%以上の落ち込みであった。同年後半になって市場は徐々に上向いてきた。主流ブランドの対応が早かったこともあり、減少傾向は反転となった。
セグメント別に見ると、エンジニアリング・プロジェクトの増加がある程度VRF販売の減少傾向に歯止めを掛けた。特に公共工事は2020年に盛んであった。3月以来COVID-19の感染を予防するプロジェクトに対する投資が急に拡大し、特に公衆衛生プロジェクトはVRFの設置を伸ばした。
住宅市場での伸びは弱かった。この分野は、特に第一四半期は住宅購入制限もあったため大きな損失を被った。一方で、不動産市場の比率は上昇し、VRF市場における主な成長分野となった。多くのVRFブランドは2020年に主導的な不動産企業と戦略的協業に焦点を当ててきている。またリニューアル市場も新たなVRFの成長分野になってきている。
〔JARN March 25, 2021〕
11.中国 2019年冷凍冷蔵食品産業の事業規模2兆元に達する
中国の国家統計局によると2019年、中国の冷凍冷蔵食品産業に係わる企業は10,850社あり、前年より147社減少した。税引き後の事業収入は2兆元(約33兆円)に達し、年率9.5%の増加となった。
中国における冷凍及び冷蔵食品の生産は絶え間なく増加している。肉は2,817万5千トンであり年率0.9%増加。水産物は739万2千トンで年率3.7%増加。米及びヌードルは302万トンで年率0.2%減少。飲料は246万3千トンで年率0.6%増加であった。
2019年に中国の冷凍冷蔵食品業界は、個別注文、高級品、及び差別化の方向に進んだ。これが消費の高級化と便利で手早い料理だけでなく安全で栄養も豊富という需要に効果的に合致した。特に新鮮にカットされ、素早く冷凍された果物や野菜製品が、忙しい都会の人々の需要に押し上げられて増加した。
〔JARN February 25, 2021〕
12.中国 2020年冷蔵庫の輸出が拡大
中国税関総局の統計によると、2020年第4四半期において貯蔵及び陳列用の冷凍冷蔵機器の輸出台数は、143万台に達し、前年同期と比較して48.36%の増加となった。この内、業務用の冷蔵庫は力強い回復を見せ2020年の輸出台数は年率12.5%の増加となった。
オール・ビュー・クラウド(AVC)のデータによると、中国の冷蔵庫の輸出台数は過去6年間堅調に伸びてきており、平均年率約20%となっている。2020年に輸出は急に伸び、1月から11月までの伸び率は年率50%を越えている。出荷が2021年の第2四半期という注文まである。
COVID-19の影響で世界的に冷蔵庫や冷凍庫の需要が増加してきている。海外で家庭での食料品の貯蔵に対する需要は引き続き増加しており、冷凍冷蔵庫に対する需要は拡大している。特に小型の家庭用冷凍庫や縦型の冷凍庫がブームとなっている。COVID-19に対する ワクチン接種が本格的に世界で広がっているため、これも低温冷蔵庫や冷凍庫の需要を増加している。
供給面でみると世界の冷凍冷蔵庫の生産はCOVID-19により大きなダメージを受けており、欧州や米国で在庫が不十分になっている。一方中国では完全なサプライチェーンと物流能力の高さにより冷凍冷蔵庫の生産は急回復した。これにより世界の注文が中国に集まってきている。
しかし輸出は為替リスクもあり、原材料の価格も上がってきているため、中国メーカーが利益水準を維持するのは容易ではない状況となっている。