2020年度 省エネ大賞
資源エネルギー庁長官賞
三菱電機株式会社
No.675 2021年3月
製品・ビジネスモデル部門
家庭用 三菱 エコキュート P37、P46シリーズ
1. はじめに
エコキュート(自然冷媒CO2ヒートポンプ給湯機)は省エネ・環境貢献機器として認知されており、省エネ性能(APF:年間給湯保温効率)向上のニーズは高まってきている。そこで、当社はエコキュートの省エネ性能(APF)を向上するため、システム全体のロス削減に取り組み、主なAPF向上技術として、貯湯ユニットでは断熱性能向上による放熱ロスの削減、ヒートポンプユニットではキーデバイスの性能改善、システム全体としては沸き上げ制御などのソフト省エネによるロス削減技術を開発した製品を発売した。その特徴について紹介する。
写真1:表彰状とトロフィー
2. 製品の技術的特徴
■特殊成型高断熱ウレタンを貯湯タンク断熱材に採用
エコキュートの貯湯タンクの断熱材はVIP(真空断熱材)とEPS(発泡ポリスチレン)で構成されており、貯湯タンク上部であるほど高温水が貯湯され、貯湯タンク下部は比較的低温水が貯湯されているため、貯湯タンク上部の放熱が多かった。また、側面はVIPが組付けられており放熱は少ないものの、貯湯タンクの上部は曲面形状であり、VIPの組付けができずEPSで断熱していたため放熱が多かった。
この課題を解決するために、当社は独自方式である特殊成型ウレタン断熱材を採用した。特殊成型ウレタンを貯湯タンクの断熱性能への寄与率が高い部分に適用することにより、省材料で高い断熱性能を実現できた(図1)。VIPの組付けが困難でかつ放熱量が多い貯湯タンク上部には特殊成型ウレタン断熱材を厚く配置し、放熱面積が大きい貯湯タンク側面にはVIPと特殊成型ウレタン断熱材を配置することで断熱性能を効率よく向上した。
図1:特殊成型高断熱ウレタン
■定格低加熱能力採用による沸き上げ運転最適化
ヒートポンプユニットは外気から吸熱して水を加熱するため、加熱能力が低いほど効率よく外気から吸熱し、COPは高い傾向となる(図2)。そのため、所定の沸き上げ熱量に対して低加熱能力で沸き上げるほど、エコキュートの消費電力量は低くなる。エコキュートは深夜時間帯内で翌日に必要な熱量をタンク内に貯湯できるように運転するが、従来機種では一定の加熱能力で沸き上げ運転を実施していた。そこで、必要な沸き上げ熱量を深夜電力時間帯内で沸き上げ可能な最低限の加熱能力を選定する制御を導入した。その結果、従来機種に比べ、沸き上げ運転の消費電力量低減が可能となった。
図2:加熱能力に対するCOP比
■CO2冷媒の特性に着目し仕様を最適化した単段ロータリー圧縮機を搭載
空調用冷媒R32に対して約3倍の動作圧となる超高圧のCO2冷媒用単段ロータリー圧縮機では高圧空間から低圧空間への冷媒移動ロス(冷媒漏れ)が大きく、圧縮機で生じる損失の大半を占める。その中でもシリンダー内径とローリングピストン外径の半径隙間からの冷媒移動が特に大きいため、この半径隙間面積の縮小がCO2冷媒用単段ロータリー圧縮機の性能改善において最も有効であることから、従来機種に対してシリンダー幅を削減することで、冷媒移動ロスの大幅改善による圧縮機効率改善を実現した(図3)。
しかし、シリンダー幅を薄くすることで吸入流路面積(流路径)の維持が困難になるという課題があった。シリンダーを超薄型化する上で、従来のシリンダー吸入流路構造では流路径を維持できず圧力損失が増大することが課題となった。これに対し、吸入流路を上軸受に設ける新構造を採用することでこの課題を解決した(図3)。
図3:圧縮機シリンダー部の構造
3. おわりに
2020年度モデル(SRT-P375UB)は、従来機種である2018年度モデル(SRT-P374UB)と比較してAPFの当社最高値を更新(4.2 従来機比+5.0%)した。その他、業界で初めて水銀レスの深紫外LEDによる菌増殖抑制機能「キラリユキープ」の搭載など、環境への配慮とエコキュートの商品力向上の両立を実現した。2021年はエコキュート発売から20周年を迎えるが、今後もヒートポンプ給湯機の普及拡大に貢献したい。
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以上
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