海外短信
No.671 2020年8月
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1.パナソニック ジャカルタの検疫センターのエアコンすべてを保守点検
新型コロナウイルスの対応でインドネシア政府を支援
パナソニックは2020年3月21日、インドネシアの公共事業・公営住宅省と共同してジャカルタのケマヨラン・アスリート・ヴィレッジに設置されているエアコンすべてを保守点検すると発表した。ここは政府が新型コロナウイルスに感染した患者に対する検疫センターとして使用することになっている。保守点検するエアコンの台数はセパレートタイプ5,672台であり、4つの棟に分散して設置されている。
ケマヨラン・アスリート・ヴィレッジはジャカルタで開催された2018年アジア大会とアジアパラ競技大会の選手村として建設された。新型コロナウイルスの感染者を処置するための応急病院として使用されている。
パナソニック・ゴーベル・インドネシアの西府正剛取締役社長は「新型コロナウイルスの感染者に対するインドネシア政府の対応をパナソニックは関心を持って支援している。これは当社のブランドスローガン“A Better Life, A Better World”の目指す方向性である。パナソニックはインドネシアの顧客と社会に対して最良の貢献を続けていく」と述べている。
パナソニックは新型コロナウイルス検疫センターに
設置されているエアコンの保守点検を実施している
〔JARN, May 25, 2020〕
2.ダイキン、富士通ゼネラル、日立ジョンソンコントロールズ空調
3社の空調製品が「iFデザインアワード2020」を受賞
「iFデザインアワード」は国際的なデザイン賞で毎年優れたデザインを表彰している。プロダクト、パッケージ、コミュニケーション、インテリア建築、サービスデザイン、プロフェッショナルコンセプト、及び建築の分野に分かれている。1953年に最初の表彰が行われた。今年は56か国から7,300件の応募があり、78名の国際的な独立系デザインの専門家が優秀なデザインを審査した。
日本の空調製品では、次の3製品が受賞となった。
●ダイキン ポータブルエアコン「キャリーミー」
これまでエアコンの設置が難しかったキッチン、洗面所、ガレージなどさまざまな場所に持ち運ぶことができる。
●富士通ゼネラル「ノクリア」Xシリーズ用リモコン
リモコンのディスプレーの上で手を左右に振るだけでエアコンのオン・オフができる。
●日立ジョンソンコントロール空調 「サイレント-アイコニック」デザインパネル
建築空間のなかで建築に溶け込んだデザインを実現したオプション・パネル
〔JARN, April 25, 2020〕
3.ダイキン 「ダーウェントトップ100 グローバル・イノベータ2020」受賞
特許の無償開放などが革新的な企業と評価される
ダイキンは、米国フィラデルフィアに本部がある世界的情報サービス企業クラリベイト・アナリティックス社が主催する「ダーウェントトップ100グローバル・イノベータ2020」に選出されたと発表した。ダイキンは今年で6年連続、7回目の受賞。
クラリベイト・アナリティックス社は、2011年から特許データを分析し、革新的な企業や研究機関の世界トップ100を選出し、過去9年間表彰してきた。所有する広範な特許データを基にして、知財動向を分析し、世界の企業や研究機関を評価している。
評価は、「数量」、「(出願特許化)成功率」、「グローバル性」、及び「影響力」の4つの区分で行われている。
ダイキンは世界で事業を展開する空調機メーカーとして、所有する特許を効果的に活用して事業を展開している。例えば、HFC32を用いた空調機器に関する特許を新興国に無償開放し、契約などの手続きを経ずに対象技術を他社が使用できるようにした。
〔JARN, May 25, 2020〕
4.三菱電機 スウェーデンの空調製品の代理店AQS社を買収
スウェーデンでの業務用空調機事業の強化を図る
三菱電機は2020年4月2日、欧州の現地法人である三菱電機欧州を通じて、スウェーデンの快適空調機器、産業プロセス空調機器、ITデータセンター冷却システム及びヒートポンプの代理店であるAQS社の株式を4月1日付で100%買収したと発表した。スウェーデンは有望な市場が見込まれると判断した。
AQS社は35年間にわたって業務用空調機器を販売しており、優れた技術的能力とノウハウを有している。今日まで三菱電機はスウェーデンでは、主に住宅用空調製品を三菱電機欧州のスカンディナヴィア支社経由で販売してきた。AQS社は、2015年に買収した三菱電機ハイドロニクス&ITクーリングシステムズ(MEHITS)が製造した業務用空調機器の主要な代理店となっていた。
スウェーデンではルームエアコンとヒートポンプ暖房給湯機が普及しだしており、業務用冷却システムではチラーの採用も増えている。またデーターセンターの増加に伴いIT冷却の市場も増えてきている。
AQS社を買収することにより、三菱電機はスウェーデンでの業務用空調機事業を強化するとともに、新たなパートナーのノウハウを活用することにより、三菱電機欧州の総合提案能力の強化も図る。
〔JARN, May 25, 2020〕
5.三菱重工サーマルシステムズ ベトナムでのエアコン販売を強化
三菱重工サーマルシステムズはベトナムでのエアコン販売を強化する計画を打ち出した。安定した経済成長を背景にした空調機市場の拡大に対応したもの。まず3月に市場拡大が見込まれる住宅用インバータエアコンの先進モデルの販売を開始した。同時にベトナムにおける三菱重工のブランドイメージを構築するためにキャンペーンが予定されている。例としては、ベトナムで最も有名なサッカー選手を起用して、三菱重工エアコンのイメージ・キャラクターとして起用する。
住宅用インバータ機の需要はベトナムでも増加しており、2017年の時点で住宅用エアコンの販売台数での割合は50%以上となっている。
三菱重工サーマルシステムズはタイで住宅用及び業務用エアコンの製造と販売を行っている。現地での事業運営は三菱重工-マハジャック・エアコンデショナー(MACO)社が行っており、2017年にMACOは部品製造工場の拡張と電装工場の新設を完了している。ベトナムでの新しいマーケットの開発でもMACO社が中心的な役割を果たすことになっている。
〔JARN, April 25 2020〕
6.ホシザキ 欧州の製造子会社と販売子会社2社を合併
機能を統合して意思決定の迅速化を図る
ホシザキのデンマークの製造子会社であるグラム・コマーシャルとホシザキのオランダの販売子会社であるホシザキ欧州は2020年6月1日付けで合併する。2社の研究開発、生産、及び販売機能を統合する。
今回の合併に先立つ2017年、ホシザキ欧州とグラムの販売部門は統合され、事業拡大を加速するために営業部隊が再編された。今回の合併ではバリューチェーンのすべての段階で意思決定の迅速化を図り、商品企画と開発の強化により、顧客ニーズの変化に即座に対応できるようにする。これにより世界の最大市場のひとつである欧州市場での業務用冷蔵庫のマーケットシェアの拡大を図る。
さらにホシザキ欧州は2020年1月に製氷機の新製品を発売した。欧州での製氷機と業務用冷蔵庫の販売ネットワークの拡大を図る。欧州は米国に並ぶ大きな市場となっている。
〔JARN, April 25 2019〕
7.中国 2020年第一四半期のエアコンの小売店での売上高45%減少
中国深圳の調査会社オール・ヴュー・クラウド(AVC)のデータによると、中国の2020年第一四半期の小売店におけるエアコンの売上高が45%減少した。
チャイナ・マーケット・モニターのデータによると、2020年第1週から第13週の間に、エアコンのオンラインでの販売台数は前年より38.7%減少し、売上高では49.5%の減少、平均販売価格は17.5%下がった。同じ期間において、オフライン・ストアーでの販売台数は52.8%の減少、売上高は60.8%減少、売価は16.9%の低下となっている。
販売が落ち込んだ原因はいくつかあるが、第一に昨年11月の「ダブル11」セールスキャンペーンや12月の「ダブル12」セールスキャンペーンで販売が爆発的に伸び、エアコン需要も充足されたこと。第二に成長が数年間続いていたことにより都市でのエアコン市場が飽和してきていること、またこれらに加えていくつかの原材料コストが大きく下がったため小売価格も下がった。最後に新型コロナウイルスの大流行により、顧客は毎日の必需品の購入に関心があり、冬季には必要なく、取付工事も必要なエアコンの購入需要は弱かったことなどとみられている。
〔JARN, May 25 2020〕
8.中国 ユニタリーエアコンの新エネルギー効率標準の施行を6か月延期
aircon.comによると中国標準化管理局が最近、ユニタリーエアコンの新エネルギー効率標準GB19576-1029及びその他8つの国家標準の施行期日を2020年5月1日から2020年11月1日まで遅らせるという告示を発表した。理由は新型コロナウイルスの影響による。
新たな標準であるGB19576-1029:‘ユニタリーエアコンの最低許容エネルギー効率標準及びエネルギー効率グレード’は4つの主な改正箇所がある。1つ目は評価方法をエネルギー消費効率(EER)から通年エネルギー消費効率(APF)へと変えたこと。2つ目はインバータ機を現在の非インバータ機に包含したこと。3つ目は現行の標準では非インバータ機についてダクトタイプと直吹きタイプの双方を包含しているが、今回の改正ではダクトタイプを別の標準に分離し‘GB37479-2019:ダクトタイプエアコンについての最低許容エネルギー効率とエネルギー効率グレード’とした。4つ目に新しい標準は、冷水機、電算機室エアコン、データ処理用エアコン、及び恒温恒湿装置を含んでいる。
新しい標準では、エネルギー効率グレードは3つの区分となっている。最も効率の高い区分がグレード1となる。グレード3は非エネルギー節約機という製品区分になっている。
〔JARN, May 25 2020〕
9.インド 新型コロナウイルスによりルームエアコン産業にも大きな打撃
新型コロナウイルスの流行によりインドのルームエアコン産業が大きな打撃をこうむっている。インドではルームエアコンの70%は夏場の2月から6月に販売される。製造業者は1月から生産を強化し、夏場のピーク需要に備えて在庫を積み増しする。2月の販売は例年並みであった。ある製造業者は前年同月より13%出荷を伸ばしている。しかし3月になって新型コロナウイルスの感染が急増し始めると、ルームエアコンの販売は急落。この傾向は夏の始まりが遅れたことにより一層強まった。3月の第2週からいくつもの州政府は人や物の移動について規制を始めた。中央政府は3月25日から21日間の完全なロックダウンを実施した。エアコンの製造、輸送、販売など不要不急と考えられるすべての活動も禁止となった。
製造も流通も現在大きな在庫を抱えている。ある推定によると製造と流通での在庫は約150万台といわれている。販売サイドは製造サイドに仕入の支払いをしていないのでバリューチェーン全体を通じて現金不足が生じている。
工場が閉鎖になってから多くの労働者は田舎へ帰郷した。工場が生産を再開しても彼ら労働者の多くは工場に戻ってこないかもしれない。これが工場再開にあたっての大きな問題になっている。
〔JARN, May 25, 2019〕
10.初めてイタリアとカタールを結んだルームエアコンのオンライン講習会実施
ルームエアコンの分野で遠距離学習について新たな成果が得られた。‘F-ガス:先進的な冷媒と冷凍空調のベストプラクティス’についてトレーニングと評価の講習会が成功裏に実施された。この講習会は国連環境オゾンアクションプログラムプロジェクトとして、オンラインでイタリアの冷凍技術者協会(ATF)とカタール政府との間で行われた。新型コロナウイルスの流行によりグローバル・ロックダウンとソシアル・ディスタンス対策が取られたため、講習会は2020年3月30日から4月1日まで一部はオンラインで、一部はカタール大学の構内でおこなわれた。これはカタール大学とカタールのナショナル・オゾン・ユニットの卓越した支援と共同作業によるものであった。また国連環境計画(UNEP)が継続してサポートした。イタリアATFとイタリアの冷凍空調の教育センターCSGは航空機を使用せずにトレーニング教材(ビデオ)を届けた。
初めてイタリアのトレーナーがヘッドフォンを付けてパソコンに向かって5人のカタールのトレーナーにオンラインで教えた。これに続いて2020年3月にはF-ガス評価講習会が遠隔オンラインで10クラス行われた。
〔JARN, April 25, 2020〕
11.南ベトナム オンラインでのエアコン販売60%増を期待
南ベトナムは乾季も終わり一年中で一番暑いシーズンになろうとしている。消費者は新型コロナウイルスの流行によりエアコンの店舗での購入は控えているが、オンラインでの販売は活況を呈している。ベトナムの新聞VnExpressによると、ベトナムのオンライン販売のプラットフォームであるTiKiは、製品の購入しやすさや販促効果によりオンラインでのエアコン販売台数は昨年の同期間と比較して60%以上の増加を期待している。省エネ機能と空気清浄機能が消費者の関心の高い最も重要な特徴になっている。
ベトナム統計総局によると、2020年第一四半期の国内総生産(GDP)の伸びは3.82%であった。これは過去11年間で最も低い数値である。地元の専門家は経済成長の弱さは、2020年のエアコンの総需要を下押しするとみている。しかし新型コロナウイルスの流行は購買行動をオフラインからオンラインへと変化させている。
〔JARN, May 25, 2020〕
12.フィンランド 2019年ヒートポンプの販売台数はほぼ10万台に達する
フィンランドヒートポンプ協会(SULPU)によると、2019年フィンランドにおけるヒートポンプの販売台数は30%増加し、ユーロベースではもっと増加幅は大きかった。昨年ヒートポンプの設置台数は98,000台となり消費者の投資ベースでは6億ユーロ(約720億円)以上であった。同時にこれまでの累積設置台数が100万台の大台に達した。フィンランドでは住宅とサービス業ビルの暖房の15%を供給している。
ヒートポンプの販売台数98,000台の内訳は、ヒートポンプ冷暖房(ATA)79,000台、地熱ヒートポンプ9,000台、ヒートポンプ暖房・給湯機(ATW)6,000台、排熱利用ヒートポンプ4,000台となっている。いずれのタイプのヒートポンプも前年よりも増加している。
戸建て住宅業者の70~80%はヒートポンプを採用する。多くの場合、地熱ヒートポンプか排熱利用ヒートポンプが選ばれている。毎年おおよそ8,000台のオイル炊きボイラが地熱ヒートポンプかヒートポンプ暖房・給湯機に代替されている。この代替率はまだとても低い。住宅のオーナーにとって変更することによる経済的利益は大きく、投資回収は通常10%以上ある。
〔JARN, April 25, 2020〕
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