省エネルギーセンター会長賞
三菱電機株式会社

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No.668 2020年3月

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製品・ビジネスモデル部門「霧ヶ峰 FZシリーズ」



1. はじめに
家庭用のエアコンは、空調を行う部屋の環境に大きく左右されるが、近年のリビングは、より多目的で使われる多機能空間へと変化している。複雑なリビングの形態では部屋の特定の場所で空調が効きづらいといった声が多いが、リモコンで気流を調整するのではなく、設定温度を変更して快適さを得ようとするユーザーも多く、無駄な空調が発生している。

快適性と省エネルギー性を高めるアプローチは、①機器効率を高める、②人の状態に合わせて運転する、③気流をユーザーに正しく届けるといった3ステップが必要であるが、気流を正しく届けるといった技術は、近年の複雑な間取りや家具が配置されたリビングに対応できていない。

そこで当社では、更なる快適と省エネルギーを実現するために、今まで困難であった気流を可視化するためセンシングの要素技術と、気流制御のソフトウェア技術を進化させた新製品を発売した。その特長について紹介する。




写真1:表彰される三菱電機株式会社
静岡製作所 ルームエアコン製造部 永井 宏典次長




2. 製品の技術的特徴
■高感度赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.+」
ルームエアコンには離れた場所の状況を把握するため、従来から赤外線センサーが活用されている。気流の可視化を実現するためには、床面等に到達した気流の微細な温度変化まで検出する必要があるため従来のセンサーから大幅に性能を向上する必要がある。新製品に導入したサーマルダイオード方式のセンサーは温度センサーとして単結晶シリコンダイオードを用い、温度変化による電流電圧の特性変化を計測する。シリコンLSIの製造プロセスを活用することによって低雑音の読み出し回路との一括形成が可能なため、比較的安価にできる。また、単結晶のシリコンダイオードを用いるため均一性にも優れ、感度のばらつきにも強いセンサーを実現できる。従来機種で使用している赤外線センサーと同等のサイズのまま、素子数を80倍、感度を約2.5倍まで向上させた赤外線センサーをルームエアコンに搭載している。



写真2:サーマルダイオード赤外線センサー



■温風の流れを確認して調整する気流制御
赤外線センサーの性能向上によって、気流の到達位置を把握することが可能となった。センシングした熱画像から、床に到達した暖気の微小な温度変化を元に等温円を画像処理によって得ることができる。室温や人の温冷感に合わせて、すばやく暖めたいときには、人の足元位置と気流の到達点を共に把握し、人の足元位置と気流到達の中心が合うように風向板が調整される。

しかしながら、複雑なリビングの間取りや家具など、障害物の影響で気流を調整しても、直接風が届かないシーンも存在する。新製品では、人の位置と気流の到達点がいつまでも合致しない場合は、気流の到達点を上下左右に一定量変化させながら、最適な気流位置を自動で探索する。探索した気流の中で、足元や人の表面温度が最も上昇する風向がユーザーにとって最適な風向となる。これによって実際に気流が直接届かないシーンでも最適な風向を選択することが可能になった。また、一度調整した気流は、その調整内容を学習させることで、次回の運転からは、少ない調整手順で最適な風向を得られるようにしている。                    




写真3:気流制御


■お出かけ中も、お部屋の温度分布をスマホで見られる「サーモでみまもり」
赤外線センサーで取得した部屋全体の高精細な熱画像を、スマートフォンで簡単に見える機能を搭載した。これによって扇風機やサーキュレータを設置したときの温度ムラの改善状況や、他にも窓やドアからの冷気侵入や日射による特定場所の温度上昇を確認できるため、省エネルギー性を高める方法を探しやすくなる。また、近年の高齢化社会の進展や共働き増加に対して、外出先からも温度環境や在宅状態などを一目で確認できるため、宅内の状態をみまもる機能としても活用できる。




写真4:スマホ熱画像イメージ


3.おわりに
 近年のルームエアコンでは、ハードウェアでの省エネルギー技術は既に極限のレベルにまで達しており、大幅な削減は難しい状況にある。三菱ルームエアコン”霧ヶ峰“ではハードウェア技術での高い省エネルギー性に加えて“いつでも・どこでも・だれでも快適”の両立に向けて、独自の赤外線センサーをコア技術としてソフトウェアでの省エネルギー技術の進化を続けている。


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