日刊工業新聞社主催 第22回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞
No.666 2019年11月
9月13日霞が関にある霞山会館にて、日刊工業新聞社主催の「第22回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞贈賞式」にて、当会の会員メンバーの三菱重工サーマルシステムズ殿が受賞されましたのでご報告いたします。前回の記事はこちら
右:三菱重工サーマルシステムズ㈱
取締役 大型冷凍機技術部長 佐々倉正彦氏
●開発で苦労した点は?
今回、受賞させていただきましたターボ冷凍機 ETI-Zシリーズは、低GWP冷媒を適用し、高効率かつコンパクトでお客様が運用しやすい製品を開発コンセプトとして、製品開発に取り組みました。インバータ標準駆動で年間を通じて高効率運転が可能である点、インバータを冷凍機一体型として搬入・設置性に優れている点、構成機器の最適配置設計により軽量・コンパクトな点等、従来機種であるETIシリーズの特長を踏襲しながら、新たに採用した低GWP冷媒の特性を最大限に活かすため、全面的に設計の見直しを行うことにより開発目標を実現致しました。
今回の開発は、冷媒物性の似通った低GWP冷媒への転換ではなく、従来冷媒であるHFC-134aと比較すると、冷媒ガス比体積が約5倍と大きく冷媒物性の異なるHFO-1233zd(E)への転換であったため、主要構成要素を基本設計から見直し、冷媒系統で使用する樹脂材料や潤滑油の再選定が必要となる等、多岐かつ広範囲にわたりました。従来冷媒とは異なる新設計構造・基準の箇所を要素試験で検証し、要改良箇所の設計フィードバックを繰返し地道に行うことにより、開発をやり遂げることが出来ました。
技術的には、圧縮機の高性能化・小型化のために最新解析技術を適用して設計した羽根車形状を適用し、高速回転する軸や軸受の設計見直しにより圧縮機と電動機を直結する構造を採用したこと、熱交換器の高性能化・小型化のために新規冷媒に最適な伝熱管形状を選択し、熱交換器内の冷媒流動に適した伝熱管配置や内部構造を採用したことにより、高性能化・コンパクト化という相反する技術課題を、従来製品を凌駕する高レベルで実現することが出来ました。
●商品の市場規模
ターボ冷凍機の日本国内における年間出荷台数は約300台前後ですが、低GWP代替冷媒採用機の開発に時間を要している小型チラーの容量帯にも適用拡大可能と考えており、商品の市場規模は増加するものと予想しています。
国内メーカの中では弊社が最も早く低GWP冷媒適用製品を世に送り出す取組を評価いただき、日本国内におけるシェアは非常に高い水準で推移しています。今回、受賞させていただいたETI-Zシリーズも2016年の発売以降、好評を得て出荷台数は年々増加しており、2018年度には弊社の日本国内における出荷台数の約3割を占めるに至っています。
●今後の取り組み
ETI-Zシリーズは700USRtまでの中小容量域に対応した製品ですが、2,000USRtを超える大容量用途にも適用が可能なGART-ZEシリーズを2017年から発売を開始しています。ETI-Zシリーズは空調用途の熱源機をメインターゲットとした製品ですが、GART-ZEシリーズは幅広い拡張性を有した製品として開発しています。空調用途だけではなく、低温や熱回収用途といった工場プロセス、空気熱源ヒーティングタワーを熱源とする暖房用途にも適用拡大を進めています。
また、日本は低GWP冷媒適用ターボ冷凍機の開発・製造、法令・規格の整備や機器の導入に関しては、世界で最も進んでいる国の1つです。今後、世界的に広がる低GWP冷媒適用製品の導入に対し、模範となる製品や対応指針を示すとともに、海外市場に対しても弊社の高効率・低GWP冷媒適用製品で地球温暖化防止に貢献していきたいと考えます。
●今後工業会に期待すること
環境負荷低減・地球温暖化防止への取り組みに対するPRおよび啓蒙活動の推進になります。製品の採用にあたっては、省エネルギー性や経済性も当然のことながら、環境負荷も重要な指標となります。お客様のご理解を深めるよう、より一層の活動をご期待致します。
(三菱重工サーマルシステムズ:長谷川氏)
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