経済産業大臣賞
東芝キヤリア株式会社

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No.662 2019年3月

(製品・ビジネスモデル部門/製品(業務)分野)
スポット・ゾーン空調システム FLEXAIR


東芝キヤリア株式会社




写真:受賞時の様子



1.新しいスポット・ゾーン空調システム FLEXAIR開発の背景
工場や倉庫などの広い空間を対象とする空調には、「全体空調が困難」、「快適な作業環境の確保」、「環境への配慮」などの様々な課題があり、その対策も千差万別である。ダクト空調による初期費用、工場生産ライン変更時の移設工事費用の増大と採光性の悪化、床置式空調機では設置スペースの確保が困難な場合もある。又、全体空調によるエネルギーコストの増大、可搬式スポット空調では、排熱による室内温度上昇などが挙げられる。

当社は、「天井ダクトを必要とせず」、「設置場所として柱や壁面を効果的に活用でき」、「優れた省エネ性能を持ちながら必要なスポット・ゾーン毎に高速気流制御により適切な空調環境が作れる」製品の開発に取組み、スポット・ゾーン空調システム「FLEXAIR」の製品化を実現した。


2.FLEXAIRの概要

本製品(図1)について、3点の特徴を以下に示す。



[1馬力室内ユニット(大風量仕様)]   [自立設置型]
図1:スポット・ゾーン空調システム FLEXAIR


表1:製品仕様




1)設置自由度の高さ
1馬力(定格能力2.5kW)の小型室内ユニットを設計し、マルチエアコンの技術により複数台の室内ユニットを冷媒配管で接続することで、設置の自由度を向上させた。送風機には小型で大風量のファンを採用し、大風量仕様で19kgと軽量・コンパクトな筐体設計を実現した。これにより、従来の空調設備が取り付けられない狭小スペースにも設置可能である。設置方法としては建屋の梁や天井からの吊下、壁面に固定する方式が可能である。また、吸込ダクトとフィルターセクションを一体化した自立設置型を準備し、床置設置も可能であり、ゾーン空調としても利用可能であり、採光性の確保、設置面積の削減、エアフィルターの低い位置での清掃も可能である。

また、図2のように配管相当長210mまでの長配管、および室内・室外ユニット間の最大落差70mに対応できることも高い設計自由度に寄与している。




図2:FLEXAIRの設置例(スポット空調方式)





図3:FLEXAIR設置例(ゾーン空調方式:自立設置型)



2)空調負荷の最小化
大規模空間は特に天井が高いところが多く、作業者密度の小さな工場では、建屋全体を空調するのではなく、空調対象となる人や装置に限定して冷暖房を行うことで最小限の空調を行うことにより、省エネ効果を得ることができる。1馬力の室内ユニットを必要な場所に単体設置してスポット空調として使い、個別制御により作業者の在/不在や個々人の温冷感に応じた運転・停止、温度設定が可能である。また、一定区画を空調する場合は、柱を利用して自立設置型を設置することにより、ゾーン空調として使用することが可能である。スポット空調とゾーン空調の使い分けと個別制御により、さらなるエネルギーロスの抑制が可能である。

3)省エネ性
FLEXAIRと当社床置直吹タイプ・パッケージエアコンとの省エネ比較を実施した。FLEXAIRはファンモータの効率改善と風路の改善による風搬送動力の低減、空気熱交換器性能の向上により、高効率運転を実現。期間消費電力量は、対床置直吹比で74%[*]まで削減可能である。

[*]60m×40m空間の空調を想定したシミュレーション計算結果。当社試算による。


3.導入事例
本製品の導入事例を紹介する。
1)スポット空調方式
図4はトヨタ紡績株式会社 猿投工場様に導入した事例である。本現場では、コンパクトな室内ユニットであることから、天窓を塞がずに採光性を確保でき、入り組んだ天井でも必要な場所に設置し、スポット空調として利用されている事例である。



 
図4:FLEXAIRの設置例(1)


2)ゾーン空調方式
図5は当社津山工場に導入した事例である。 15m間隔の柱を利用し、自立設置型を設置することにより、ゾーン空調として運用されている。本現場では、空調対象域で作業する際に空調設備を運転し、労働環境の改善を行っている。



図5:FLEXAIRの設置例(2)


4.おわりに
「大規模空間の労働環境をより快適にしたい」というお客様の現場の声に耳を傾け、業界に先駆けて2016年4月から標準風量仕様の販売を開始し、「働く従業員のために、もっと速い(強い)風が欲しい。もっと遠くまで風を届けられないか。」といった現場で働くお客様からのご要望にお応えし、風量アップ、風速アップを実現した大風量仕様の販売も2018年7月末から開始した。
当社は大空間空調の高効率化を図ったことに加え、設置自由度の高さ、スポット空調とゾーン空調による空調負荷の最小化といった特徴を有した、新しいスポット・ゾーン空調システムであるFLEXAIRにより、ヒートポンプのさらなる普及拡大を通じて、労働環境改善や省エネルギー、温室効果ガス排出抑制に貢献していく。


以上
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