アジア建築設備推進委員会 第8回調査報告 ~ハノイの研究の視点~
No.662 2019年3月
今回当工業会より「アジア建築設備推進委員会」の調査に参加しましたので、以下に調査報告を掲載したします。
■アジア建築設備推進委員会とは
NPO給排水設備研究会の一つの活動として、「アジア建築設備推進委員会」を継続している。その目的は、「アジアの給排水設備及び建築設備(空調・電気)の動向を研究し、日本の技術・ビジネスとのコラボレーションの可能性を検討する」ことにある。過去7年間、ベトナム、インド、インドネシア、ミャンマー、マレーシア、フィリピン、カンボジアにて調査を行ったが、第8回目の今回は、現在、急成長を遂げ、日本企業の進出が目覚ましいベトナムのハノイを調査した。既にホーチミンを調査しているが、その後7年が経過し、その間のベトナムの発展がめざましいため再調査を行った。
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空調関連記事を以下に抜粋
5. 空調設備
5.1 ベトナムのエアコン市場の概況
東南アジアの人口は、2020 年には7億人に達すると推測されている。経済開発に伴い中産階級の人口が急拡大し、この地域におけるエアコン市場の発展を推進する基
盤となっており、年平均 5.6%増加している。
ベトナムは年 7%の増加と最も有望で戦略的な市場と見なされている。ベトナムのエアコン市場は 2016 年時点で 1300億円を超え、2020 年には 2000 億円ほどに拡大する見通しである。拡大が予想されるベトナム市場を重視して、エアコンの大手メーカーが目下ベトナムに拠点を設けようとしている。ベトナムの平均ルームエアコン(RAC)世帯毎普及率は、2017 年で約 17%と 20%近いレベルだが、都市部では既に 40%を上回っている。これからが本格的な普及期で、更に需要が拡大する見込みだ。
ベトナムの南部では、一年中 RAC の需要があるが、北部では、4~6 月だけが RAC 販売のピーク・シーズンで、7 月以降は販売が著しく低調になる。しかしながら、
近年は生活水準が改善されたので、北部地域でさえ一年中 RAC が販売されるようになり、RAC 市場における天候の影響が少なくなっている。南部ホーチミン市の年間
平均気温は 30℃を超えるので、冷房専用の RAC が市場だが、北部のハノイ地方では 11~3 月の間は朝夕の気温が比較的低いのでヒートポンプ機の需要がある。
ベトナムの RAC 市場には未だ小規模であるがウィンド型エアコンは存在し、スプリット型のペア機が一般的である。ベトナムの部屋は全般的に小さいので、1 馬力の壁掛型 RAC が特に好調である。居間では、1.5~2 馬力レンジが広く使用されている。
ベトナムでは、月収の 30%が電気代に消えるとされるほど電気代が高いので、ベトナムのユーザーはインバーター機を好む。インバーター機は、インバーター機能の
ないものに比べて、省エネ性能は 30%高い。ユーザーは、エアコンを大型で耐久性のある家電品と見ており、高級品、特にダイキンやパナソニックなどの日本ブランドに対する人気が高くなっている。
競合状況はダイキンとパナソニックがベトナムのRAC 市場をリードしている。両社の合計市場シェアは半分以上を占めており、東芝キヤリアと三菱電機、韓国のLG とサムスン電子、スウェーデンのエレクトロラックスが追従している。
ベトナム経済の急速な発展に伴い、不動産業界が驚くほど急成長した。2000 年頃の中国のように、ベトナムでは建設現場が数多く見られる。不動産業界の急成長によ
って、空調・冷凍業界において巨大な需要が創出された。
ホーチミン市の南部は、同国の重要な商業センターであり、ベトナムのエアコン市場の約 30%を占めている。中部ベトナムには観光都市が沢山あり、多くのプロジェク
トがあるため、業務用エアコン業界にとってビジネスチャンスが多い。
業務用エアコンの中では、ビル用マルチエアコン(VRF)が約 20%を占めている。東南アジアで最大の市場規模と最大の潜在需要がある。ベトナムの VRF 市場規模は 1 万 6 千台と推測される。
冷媒(R32)エアコン市場の動向に関しては、ベトナム政府が R22 冷媒エアコンを 2030 年までに段階的に廃止する方針だが、スプリット市場の R22 比率は既に約20%まで低下。2014 年にダイキンが R32 機の販売を開始し、パナソニックや東芝キヤリアも追従、2017 年のR32スプリット市場は約80万台で、R32比率は約40%。
主にパナソニックとダイキンが市場をリードしている。
エアコンは、人々の生活や仕事での環境を改善し、現代社会発展のシンボルの一つとなっている。東南アジアにおける経済成長が生活の質を向上させている。巨大な
エアコン需要が生じる。
シンガポールの繁栄は、エアコン業界の存在なしには達成出来なかった。その他の東南アジア各国がシンガポールのレベルに到達したと想像すれば、東南アジアの巨大な潜在需要が非常に明確になってくる。よって、ベトナムは、この地域における『新星』と言える。
以上
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