省エネルギーセンター会長賞 ダイキン工業株式会社
No.658 2018年7月
写真:受賞時の様子
今回の新製品では、機器単体の性能向上、60馬力への容量拡大に加え、市場要望のヒアリングにて要望の多かったシステム制御の高度化による実省エネ性向上をコンセプトに開発に取り組んだ。
2.製品の特徴
本製品(図1)は、機器単体の性能向上とシステム制御による実省エネ性向上に取り組んでおり、それぞれについて、特徴を紹介する。
1)機器単体の性能向上
①空気熱交換器のF型構造(図2)
大容量化、高効率化を図るには、空気熱交換器のサイズアップが必要であり、製品のサイズアップを伴うのが一般的である。製品サイズを変えることなく、大容量化、高効率化を実現するために、業界初の左右非対称F型の熱交換器形状を採用し、従来機と同等の据付面積で、空気熱交換器の表面積を従来機比、約1.6倍まで拡大させ、空気熱交換器性能25%向上を実現した。
②新型スクロール圧縮機のインジェクション回路、背圧コントロール機構(図3)
中間インジェクション回路を採用することにより、同一回転数での冷媒循環量をアップさせ、定格性能を約9%向上させた。さらに、中間インジェクション回路は高外気温度での冷却運転、低外気温度での加熱運転など高負荷時により大きな効果を発揮するため、実省エネ性においてもメリットがあると考えている。
背圧コントロール機構を採用することにより、低負荷時の可動スクロール押し付け力低下による高低圧部の内部漏れを軽減し、部分負荷効率を向上させた。
③ファン大型化
ベルマウスの外形寸法を極小化し、製品サイズを変えることなくファン大型化(φ700⇒φ800)を実現し、モータの新規開発と合わせ、ファン消費電力を約 13%低減した。
以上の取り組みにより、30馬力から60馬力全てで、業界トップクラスのCOP、IPLVを実現した。
2)システム制御による実省エネ性向上
①VWT(Variable Water Temperature)制御
従来は屋外気温、湿度によらず、一定の設定温度にて送水しており、必要な能力が小さい時は、より省エネ運転をできる余地があった。VWT制御では使用状況に応じて、快適性を損なわない最適な送水温度に変更し、省エネ性を向上させる。当社の自社ビルにおける実証試験では、試験期間の平均COPが約33%上昇するという試験結果を得られた。
②VRVとセントラルの協調制御
従来はそれぞれ個別に制御を行っていたVRVとセントラル機器の制御を協調させて、システムの最適化により省エネ性や快適性を高める。
協調制御の2つの例を紹介する。負荷協調制御では、使用状況に合わせて、システムの消費電力が小さくなるようにVRVとセントラルの負荷比率を制御する。VRVデフロスト協調制御では、VRVがデフロスト中にセントラルが給気温度、送風量を増加させて、居室空間の温度低下を防止する。
上記の機能以外にも、能力・消費電力などのエネルギー情報を見える化し、お客様のエネルギーマネジメントに活用できる「エネルギーの見える化」や、「流量指示制御(他熱源併用制御)」という他熱源と併用する場合に、お客様の指示に合わせた能力で運転する機能を追加し、システムを最適化してシステム全体での実省エネ性向上に貢献している。
3.おわりに
新製品ヘキサゴンフォースでは、業界トップクラスの機器単体性能を実現するとともに、システム制御の高度化にも取り組むことで、実使用における省エネ性の向上も実現した。
今後も、機器単体の省エネ性能だけでなく、実使用での省エネ性能にも着目し続け、省エネルギーに貢献していく。
また、温室効果ガス削減については、省エネ性だけでなく、冷媒種類についても考えなければならない。モントリオール議定書のキガリ改正により、ヘキサゴンフォース含め多くの空調機・冷凍機に使用されるR410AなどのHFC冷媒も段階的に規制することが採択された。当社は、R410Aに対し、地球温暖化係数が約68%低いR32冷媒を採用したヘキサゴンフォース32を今年11月より順次発売予定である。機器の省エネ性向上に取り組むとともに、冷媒の選択という側面からも温室効果ガス削減に貢献していく。
※1:2015年度(平成27年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について
(国立研究開発法人国立環境研究所 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス)
※2:節電アクション(資源エネルギー庁)
※3:大型は40馬力以上を示す。
以上
Topへ戻る