第12回 日中韓工業会会合出張報告
No.658 2018年7月
毎年開催されている日中韓工業会会合が5月17日に中国にて行われたので報告する。(写真1)写真1:会義の様子
【開催日時】
2018年5月17日(木)14:00ー17:20
【開催場所】
中国 昆明市
Wyndham Grand Plaza Royale Colorful Yunnan Kunming
6階 カンファレンスルーム
【参 加 者】
中国:CRAA (China Refrigeration and Air-conditioning Industry Association)
Shi Min(Chief Director)、
Zhang Zhaohui(Secretary General)、
Liu Xiaohong(Deputy Secretary General)、
Li Si(Secretary)、
Zhu Yiping(Secretsry) 5名
韓国:KRAIA (Korea Refrigeration and Air-conditioning Industry Association)
Hwanyong Nho(Chairman)、
Hyukjoong Kwon(Excutive Director/Acting President)、
Jaeho Lee(Deupty general Manager/certification) 3名
日本:JRAIA(The Japan Refrigeration and Air Conditioning Industry Association)
パナソニック(当時次期会長会社)高木俊幸(エアコン社 社長)、
安田透(同 空調渉外室長)、
Tan JieLing(パナソニックエアコン広州 総経理室長)
岡田哲治(当工業会専務理事)、
長野昌利(同国際部参事) 4名
【ゲストスピーカー】
Cheng Jainhon(Professor)
China National Institute of Standardization.
中国標準化研究院
Du Peijian(Chairman)
雲南Dongqi
電気工程株式会社・昆明 Dongqi 科技株式会社
写真2:Cheng氏の講演
1.ゲスト講演
1)Shi Min会長による開会挨拶の後、「中国における冷熱空調の省エネルギー標準化体系と制定促進」に関する講演を、ゲストスピーカーで中国標準化研究院のCheng Jainhon研究員が行った。(写真2)
2)会議の最後に、地元で業務用 CO2給湯機の設計・製造・販売を行う企業責任者から「CO2ヒートポンプの中国における発展と応用」と題し講演が行われた。(写真3)(JRAIA一行は5月18日(金)に帰国のため参加不可となり、急遽プレゼンテーションが設定された。)
写真3:Du氏講演
2.各工業会発表
2-1.【日本/JRAIA】(詳細省略)(写真4)
1)2017 年度市場動向
2)日冷工の世界のエアコン 2017 年需要推定(RAC、PAC、VRF 台数)並びに地域別のインバータ比率、冷媒種比率を紹介。
3)2018年度のキガリ改正に伴うオゾン層保護法改正に関するMETI資料による改正内容の説明
4)12月開催の神戸シンポジウムの紹介
5)タイFederation of Thai Industriesの3か国定例会議へのオブザーバー参加の打診
写真4:JRAIA
2-2.【韓国/KRAIA】(写真5)
1)市場動向 2016 年実績
総生産額1兆120億円/15年比 99%、国内販売5650億円/15年比 95%、輸出販売6170億円/15年比102%、国内販売台数では、チラー機器約2500台/15年比125%、ルームエアコン200万台/15年比125%、ヒートポンプ給湯機34万5千台/15年比116%などが市場需要動向としてグラフを紹介。
2)冷凍空調関連法規制動向
・省エネルギー規格の強化と題し4カテゴリー(冷房機器、冷暖機器、マルチヒートポンプ、業務用冷凍機と省エネ5ランク別の分布状況を説明。
・キガリ改正関連
韓国でのキガリ改正に基づく、法律名称の変更、指定代替冷媒の追加、定義の追加などの現状が説明された。また“大気保護に関する対応方針と評価対応法”に基づく冷媒使用機器における冷媒回収と冷媒取扱いに関する管理の強化などの内容紹介、冷媒管理ライセンスの認証管理者数など、一連の説明があった。
3)韓国の大気汚染の状況と対応について
・昨年に引き続き、韓国の大気中に及ぼす自国要因、隣国から影響としての PM10、PM2.5含有率、異常値日数の都市別実態を示すグラフが紹介された。またその要因分析として、都市部では、ディーゼルエンジンの排気、構造物・造船建設、工場排気が上位3要因を占め、全国的には工場排気、建設現場・造船、発電プラントによる要因が上位3要因であることを説明。これらに対する改善策の考え方、今後の対応について説明があった。今後自国内での取組み、また北アジア諸国との国際協力などを踏まえた目標設定などについての説明がなされた。
4)HARFKO2019紹介
2019年3月12日(火)~15日(金)ソウルKINTEXにて24か国250社の参加で開催予定。
写真5:KRAIA
2-3.【中国/CRAA】(写真6)
1)市場動向2017年実績
2017年1月からの年初は、急速な伸びを示したものの、下期はゆっくりとした成長であった。
ルームエアコン生産高11兆1350億円/16年比114%、うち輸出高は1兆8700億円/16年比118%、産業・商業用エアコン生産高5兆2700億円/16年比111%、うち輸出高は5100億円/16年比140%、ルームエアコン台数(室外機)1億2700万台、車載空調2850万台、商業用圧縮機27万2000台、マルチエアコン161万台、ファンコイル390万台。中国の冷凍空調業界は2018年も堅調に推移し年率 8%の成長が期待されると資料での説明があった。
2)法規制制定の動向
①クリーン暖房の推進
北方都市を中心にクリーンエネルギーによる暖房を推進する。2019年までに北方の冬季の50%をクリーン暖房でカバーする。400万トンの石炭が置き換わることになる。2021年までには70%を目指し1億5000万トンの石炭消費をカバーする。今後高効率冷蔵、空調、給湯にビジネスチャンスが訪れるだろう。
②コールドチェーン輸送力の向上による食品安全の確保と消費の向上
市場要望が高い高効率な冷凍冷蔵輸送力強化のための全体計画方案、要求への対応などを検討する。またこのための設備技術力の向上、温度管理制御設備の改善、輸送を前提としたシステムの最適化、全体管理力の強化を図る。
③UNEP HPMPステージⅡChina 2016年提起 (HCFCs Phase out Management Plan)の説明
R410A、R134a などの高 GWP 代替冷媒がオゾン層破壊物質の代替品として使用できない現状、CO2、NH3、HC、HFOsなどを代替物質とし、削減目標量の50%をこれらの物質で代替する活動を推進中。ステージⅡの次ステップとして商業冷蔵産業の代替化は、中小事業規模企業の参加によりHCFC 代替化目標量の20%が達成されるであろう。このため中小事業規模企業の強化、プロジェクトの活性化、強化が望まれる。また今後、CRAAとMEP(Ministry of Environmental protection)、FECO(Foreign Economical Corporation Office)は協力して異なる製品分野での低GWP代替技術の適用検討を進め、またエネルギー効率課題、低GWP応用機器のレベルアップと効率向上に取り組んでいく、という主旨の資料発表があった。
写真6:CRAA
3.質疑応答の状況 (写真7)
①JRAIA 側(パナソニック高木社長)から、中国の R290A(プロパン)に関する進捗と考え方について
→CRAA 張秘書長から回答、国、CRAAは方針としてルームエアコンは R290A、商用はR32を採用する方針を示しているが、実状はこれまで市場で発生した安全事故3件(と発言)により、市場での修理、サービスレベルの向上が、格段に必要との認識を持っている。こんな状況でありR290の市場導入は期待したほど進展していない。
②日本の商用エアコンの PAC、VRF の今後の方向性について
→日本としては商用の大型機器に関しては R32(微燃性冷媒)で進めようとする動きであるが、建物側でのリスク回避策(ガス漏れ検知機、換気機能の設置など)が前提条件と検討されているため、この点は関係団体(日本建設業連合会)側での対応を要請しており、検討に時間を要している状況。
KRAIA 意見として、韓国市場では PAC,VRF が高層ビルに多く設置されるが、そのような場所にR32(微燃性冷媒)が使われることについて懸念を持つ。韓国ではハードルが高い。
③韓国の大気汚染改善に関して
→韓国自国内の要因対応と併せて、北アジア諸国(特に中国)の協力が欲しい旨の発言があったが中国側からの積極的な発言はなかった。
④中国北部エリアでの CO2給湯機の普及は、エネルギー効率の向上、大気汚染の改善策として将来展望があると思われるが、なにか特別な施策を打っているか?
→電力料金施策などを考慮に入れる必要があると思うが、高温水の需要があり、CO2 給湯機については見込みがあるものと期待しており、今後も発展するものとして種々対応を行う。
⑤日本の指定製品でルームエアコンはGWP750目標で2018年となっているが、達成可能なのか
→日本のルームエアコンは100%R32 採用を終えており、この目標は達成済みである。
⑥タイ FTI のオブザーバー参加に関する意見交換
→中国意見:タイのオブザーバー参加を皮切りに、他のアジアの国々も参加したいと要望する可能性を含む話題として考える必要があり、時間をかけて検討する必要があると思う。
韓国意見:アジア諸国への貢献ができるという点において FTIのオブザーバー参加に賛成する。
結 論:主催者CRAAの発言が“時間をかけた検討”であったため、当面、FTIのオブザーバー参加は見送りとなった。
写真7:質疑応答
最後に、KRAIAから次年度開催場所と時期の提案があった。開催場所は釜山市、開催時期は5月末。
写真8:集合写真