緊急セミナー[高圧ガス保安法改正の要点はこれだ!]参加報告 前編
No.656 2018年3月
2月2日、日本冷凍空調学会主催の掲記セミナーに参加したため、その概要を二号(No.656、657)にわたり報告する。本セミナーは日本フルオロカーボン協会、高圧ガス保安協会および当工業会が協賛しており、当工業会からは松田技術部長が[基調講演]を、規制改革対応WG山下委員が[JRA GL-20(特定不活性ガスを使用した冷媒設備の冷媒ガスが漏えいしたときの燃焼を防止するための適切な措置)の位置付け及び概要]講演を担当し、セミナーの重要テーマを担った。
今回の緊急セミナーは、2016年11月1日および2017年7月25日に施行された高圧ガス保安法政省令が、比較的大きな改定であったことを受け、2回の改定内容の要点整理と、改定に基づく特定不活性ガス取扱上の留意点を、改めて解説する機会提供を目的としたものであった。同一テーマを東京/大阪 の2会場で実施するもので、東京会場である機械振興会館B3-2研修室の上記セミナーに参加した。参加者は約100名、受付時間早々から用意された席がほぼ埋まり(写真1)、高い関心を集めたセミナーであった。
今回の緊急セミナーは、2016年11月1日および2017年7月25日に施行された高圧ガス保安法政省令が、比較的大きな改定であったことを受け、2回の改定内容の要点整理と、改定に基づく特定不活性ガス取扱上の留意点を、改めて解説する機会提供を目的としたものであった。同一テーマを東京/大阪 の2会場で実施するもので、東京会場である機械振興会館B3-2研修室の上記セミナーに参加した。参加者は約100名、受付時間早々から用意された席がほぼ埋まり(写真1)、高い関心を集めたセミナーであった。
写真1:開演前の会場の様子
表:平成29年度2月セミナー 講演テーマおよび講師
全ての講演テーマで詳細内容の報告があったが、上記2回の高圧ガス保安法政省令の改定内容で、法の適用を受ける[一定能力を超える冷凍設備]に関係する重要項目の一部を、冒頭整理しておく。
<2016年11月1日改定内容>
①[特定不活性ガス]が新設された。高圧ガス製造者として届け出/許可が必要な区分において、冷媒ガス種別規制体系では、該当の[特定不活性ガス]は、法改定以前の(不活性以外のフルオロカーボンである)第2グループから、改定後は(不活性ガス・特定不活性ガスのフルオロカーボンである)第1グループへ変更となった。
②[特定不活性ガス]として、R32/R1234yf/R1234zeの三つの冷媒種が掲名された。
<2017年7月25日改定内容>
③二酸化炭素(CO2)冷媒の届け出/許可が必要な区分を、不活性のフルオロカーボンと同様とした。CO2冷媒に関しては、冷媒ガス種別規制体系では法改定以前の(その他のガスである)第3グループから、改定後は(不活性ガス・特定不活性ガスのフルオロカーボン、二酸化炭素である)第1グループへ変更となった。
④冷凍保安規則(冷凍則)において、可燃性ガス/不活性ガスはそれぞれガス名を掲名して定義していたが、ガス名を掲名せずに新冷媒の位置付けを判断できるよう、
(1)爆発限界の下限(LFL)≦10%または
(2)爆発限界の上限(ULF)と下限(LFL)の差≧20%
の判断基準に該当するものが可燃性ガスと定められた。この判断基準によれば、R1234yf/R1234zeは可燃性ガスであるため、箇条では[特定不活性ガス(R1234yf/R1234ze)を除く]として、可燃性ガスから除外した。
これらの法改定は、以下のように微燃性冷媒の冷凍設備利用に対する規制緩和と、保安強化を求めるものとなっており、セミナー講演内容の注目点であった。
1)冷凍則上は、CO2冷媒/R32/R1234yf/R1234zeは、法改定以前から不活性ガスとして掲名されていたR410A/R134a/R404A等の不燃性冷媒と同様の、冷媒ガス種別規制体系となった。すなわち、5冷凍トンまでが適用除外、5-20冷凍トンはその他製造者、20-50冷凍トンは第2種製造者(設備設置時は届け出が必要)に該当、50冷凍トン以上は第1種製造者(設備設置時は許可が必要)に該当となった。なお、ここで言う冷凍トンは[法定冷凍トン]であり、設備機器の冷凍能力ではない。例えば、一般的な空冷式ヒートポンプ空調機器では、5冷凍トンは冷房能力12馬力強に相当する。
2)一般高圧ガス保安規則(一般則)では、R32/R1234yf/R1234zeの特定不活性ガスは、製造(機器の稼働)/貯蔵/移動において、可燃性ガスと同等の保安規則となっている。これは、届け出が不要なその他製造者(5-20冷凍トンの冷凍設備)にも、冷媒ガスが漏えいしたときの燃焼を防止するための処置が必要であり、R410A/R134a/R404A等の不燃性冷媒とは、保安上の取扱いが大きく異なっていることを理解する必要がある。
3)可燃性ガスの判断基準を定めた直近の冷凍則改定は、掲記④-(1)(2)の判断基準に該当しなければ、法規上不活性ガスに区分されることとなり、リスクアセスメント(RA)を行っていない冷媒も、第1グループ機器に適用できることとなる。現状では特定不活性ガスとしての数値定義方法が確立されていないため、判断基準は暫定処置の位置付けと理解する必要がある。
上記2)については講演の席上、当工業会の山下講師から「特定不活性ガスを使用した機器を安全に運用する方法を、ガイドラインJRA GL-20として取りまとめた。GL-20は、冷凍保安基準検討委員会の了承が取れており、近日中に高圧ガス保安協会HPにて委員会審議結果として公開される予定である。GL-20の記載内容は、例示基準相当と理解いただいて良い。」の力強い最新報告があった。
上記3)については講演の席上、松浦講師から「当面、日本冷凍空調学会新冷媒評価委員会で不活性と判定された冷媒のみが、不活性ガスとして取り扱えることに留意願いたい。」の報告があった。
当工業会では、RA実施済の3冷媒ガス(R32/R1234yf/R1234ze(E))の物性表数値から、RAを経ていない他の微燃性冷媒においても、特定不活性ガスと判断できる判定基準/物性値を規定したJRA規格の制定を急いでおり、着々と法の適切な運用に向けた支援/準備をしているところである。
上記3)については講演の席上、松浦講師から「当面、日本冷凍空調学会新冷媒評価委員会で不活性と判定された冷媒のみが、不活性ガスとして取り扱えることに留意願いたい。」の報告があった。
当工業会では、RA実施済の3冷媒ガス(R32/R1234yf/R1234ze(E))の物性表数値から、RAを経ていない他の微燃性冷媒においても、特定不活性ガスと判断できる判定基準/物性値を規定したJRA規格の制定を急いでおり、着々と法の適切な運用に向けた支援/準備をしているところである。
引き続き、講演の様子は次号(No.657)に掲載する。
以上