建築研究所 施設見学会報告
No.656 2018年3月
国立研究開発法人建築研究所は、国土交通大臣から示された中長期目標に基づき、公平・中立の立場で、所内の高度な実験施設を活用し、住宅・建築・都市計画技術に関する研究開発、地震工学に関する研修等を総合的、組織的、継続的に実施する機関である。
研究開発の成果は、民間の技術開発や設計・施工の現場で活用されることにより、国民の安全の確保、健康で快適な居住空間の実現、省エネルギーや環境への配慮等持続可能性の確保、消費者への安心の提供など、我が国の住宅・建築・都市の質の確保・向上に貢献することを目的に取組んでいる組織である。
研究グループには、『環境研究グループ』『構造研究グループ』『防災研究グループ』『材料研究グループ』『建築生産研究グループ』『住宅・都市研究グループ』があり、今回の見学会は『環境研究グループ』の建築環境実験棟にある研究施設を見学した。
建築環境実験棟には、省資源・省エネルギーを考慮しつつ居住環境水準の改善を図るため、人間の心理や生理に関わる側面と、躯体や設備の物理的な側面を並行して研究するための実験設備がある。
では、各実験設備に関して報告する。
研究開発の成果は、民間の技術開発や設計・施工の現場で活用されることにより、国民の安全の確保、健康で快適な居住空間の実現、省エネルギーや環境への配慮等持続可能性の確保、消費者への安心の提供など、我が国の住宅・建築・都市の質の確保・向上に貢献することを目的に取組んでいる組織である。
研究グループには、『環境研究グループ』『構造研究グループ』『防災研究グループ』『材料研究グループ』『建築生産研究グループ』『住宅・都市研究グループ』があり、今回の見学会は『環境研究グループ』の建築環境実験棟にある研究施設を見学した。
建築環境実験棟には、省資源・省エネルギーを考慮しつつ居住環境水準の改善を図るため、人間の心理や生理に関わる側面と、躯体や設備の物理的な側面を並行して研究するための実験設備がある。
では、各実験設備に関して報告する。
◇LCCM住宅 (国総研:桑沢研究官)
LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)とは、住宅の長い寿命の中で、建設時、運用時、廃棄時においてできるだけ省CO2に取り組み、かつ更に太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含め生涯でのCO2収支をマイナスにする住宅である。
これらを実現する為にはCO2排出量の少ない構工法・材料であること、運用時のエネルギー消費が削減できる住性能・設備であることと、エネルギーをつくり出す設備機器が装備されていること、そしてそれらを理解した住まい手の環境行動、が求められる。
このLCCM住宅の課題と可能性を検証しようというのが、今回のデモンストレーション棟である。
LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)とは、住宅の長い寿命の中で、建設時、運用時、廃棄時においてできるだけ省CO2に取り組み、かつ更に太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含め生涯でのCO2収支をマイナスにする住宅である。
これらを実現する為にはCO2排出量の少ない構工法・材料であること、運用時のエネルギー消費が削減できる住性能・設備であることと、エネルギーをつくり出す設備機器が装備されていること、そしてそれらを理解した住まい手の環境行動、が求められる。
このLCCM住宅の課題と可能性を検証しようというのが、今回のデモンストレーション棟である。
写真1:LCCM住宅外観
◇通風実験棟(建研:西澤研究員)
研究の背景は、①温暖地の省エネと快適性の為の鍵『風通し』②通風計画の為の定量的な設計手法の必要性③モデル化とその検証のために実物大実験が有効(縮小模型では正確なデータが得られない)との知見が背景にある。
研究計画(概要)は、①通風性状の可視化②開口部と間仕切りの状況、外部風速・風向などの要因と、通風量の関係に関する実験③簡便な通風量予測モデルの作成と検証④通風の数値計算法の検証⑤風圧係数分布の実験、屋外実験との連携⑥実用的な通風計画手法の開発が、その概要である。
設備は、電動機内蔵単段軸流送風機6台(各37kw)、冷却装置能力(340kw)、実験棟規模(34.5mx19.8mx高さ15m)、風洞(全長82m,測定部幅15.5m,同高さ9m)の規模を有する。
写真2:通風実験棟内部
◇ 人工空実験室(国総研:三木研究官、山口研究官)
昼間の状況を800本の蛍光灯を使用し再現する国内唯一の人工空実験室であり、人工的に天空を再現し、日射の侵入角の影響を検討するための施設となっている。
天空の雲などの位置、高さ、大きさを再現することも可能であり、アクリルドーム外側照射方式を採用している。(40W蛍光灯800本により昼光再現、方位/高度別照度可変)
住宅・オフィスにおける、特にオフィスの冷房時における採光計画(どのように光を取り込むか)、LED採用等でいかに空調負荷を低減できるかを研究し『光と省エネ』の効果を実証している。
昼間の状況を800本の蛍光灯を使用し再現する国内唯一の人工空実験室であり、人工的に天空を再現し、日射の侵入角の影響を検討するための施設となっている。
天空の雲などの位置、高さ、大きさを再現することも可能であり、アクリルドーム外側照射方式を採用している。(40W蛍光灯800本により昼光再現、方位/高度別照度可変)
住宅・オフィスにおける、特にオフィスの冷房時における採光計画(どのように光を取り込むか)、LED採用等でいかに空調負荷を低減できるかを研究し『光と省エネ』の効果を実証している。
写真3:人工空実験室内部
◇模擬オフィス (国総研:宮田研究官)
建築物のエネルギー消費性能を評価する手法を開発するうえで、様々な技術が実態としてどのような性能を発揮しているかを検証して、この実態性能を反映させることが重要である。(JIS等の限られた条件下での試験だけでは実態が掴めない)
平成21年から実ビルを対象とした実測調査を行い、建物や機器の『使われ方』に関する知見は十分に得たものの、機器の実働特性については『課題があること』が明確になった。しかし、実ビルでの計測は制約が多く、詳細を詰めることが困難であった為、自由に試験を行うことができる模擬空間(オフィスを想定)を構築した、と説明があった。
空調システムは以下の通りとなっている。
・インテリア空調 : 天埋ダクト型室内機(ビル用マルチ)x2台
・ペリメータ空調 : 床置きローボーイ型室内機x6台,天井吹出型室内機
・外調機 : 直膨コイル付全熱交換機x1台,調湿外気処理機x1
建築物のエネルギー消費性能を評価する手法を開発するうえで、様々な技術が実態としてどのような性能を発揮しているかを検証して、この実態性能を反映させることが重要である。(JIS等の限られた条件下での試験だけでは実態が掴めない)
平成21年から実ビルを対象とした実測調査を行い、建物や機器の『使われ方』に関する知見は十分に得たものの、機器の実働特性については『課題があること』が明確になった。しかし、実ビルでの計測は制約が多く、詳細を詰めることが困難であった為、自由に試験を行うことができる模擬空間(オフィスを想定)を構築した、と説明があった。
空調システムは以下の通りとなっている。
・インテリア空調 : 天埋ダクト型室内機(ビル用マルチ)x2台
・ペリメータ空調 : 床置きローボーイ型室内機x6台,天井吹出型室内機
・外調機 : 直膨コイル付全熱交換機x1台,調湿外気処理機x1
写真4:模擬オフィス
◇ビルマル実験室(国総研:宮田研究官)
研究は、ビル用マルチパッケージ型エアコンが普及し、冷媒として『水』『空気』ではなく『フロン』を使うため、性能の計測が難しいとの背景がある。(JIS等で定められた理想的な条件下での性能は表示されているが、実態としての性能は不明)
複数の実建物において詳細実験を行い、JIS等による試験値と実態性能には乖離があることが判明したため、JIS等の試験結果から、実態性能を予測する手法を開発することを目的とした。
JIS等の試験では、十分な量の安定した熱負荷が試験条件だが、実際には熱処理量がとても小さい状況が頻繁に発生する。また、各室内機の熱処理量が同じである試験条件だが、実際には建築計画に依り、各室内機の熱処理量は均等ではない(偏在する)場合が多い。これらの実態を再現する実験環境を構築することで、エネルギー消費特性を明らかにすることを、目指している。
平成25年3月に空調設備の稼働特性を評価するための実験装置(建築環境実験棟1階)が完成した。試験装置の概要は以下の通りとなっている。
・試験が可能な空調設備の能力範囲:
-0.12HP(冷房0.33kw,暖房0.38kw)~20HP(冷房56kw,暖房63kw)
・室外機1台に対して複数台の室内機が接続される『ビル用マルチパッケージ型エアコン』が主な計測対象。
写真5:ビルマル実験室(室外機)
写真6:ビルマル実験室(室内機)
【所感】
施設見学会のご案内をいただいた宮田さんは、国土交通省 国土技術政策総合研究所の主任研究員で、現在は環境研究グループにて健康で心地よい生活環境の実現や、地球環境に対する負荷低減などを目的として、建築物の温熱環境・省エネルギー・空気・光・音環境・建築設備などに関する研究を行っておられる。
深い学識を持ち、我々の質問に対しても分かりやすく丁寧に回答をいただいたことで、参加者一同興味深く見学することができ、大変有意義な見学会を開催することが出来た。(参加者:19名)
写真7:宮田主任研究官
写真8:質疑応答