「よく働き、よく遊ぶ ~ロンドン編 前編 ~」国際部 笠原秀晃
No.652 2017年8月
今号の海外駐在記は当工業会の国際部長、笠原秀晃氏によるロンドン駐在記です。今回も大作となりましたので、前編(No.652 8・9月号)と後編(No.653 10・10月号)の2号に分けて掲載します。まずは前編をご覧下さい。
その他海外駐在記はこちらから
■ドイツ駐在記(パナソニック 小林様)
■インド駐在記(日冷工 波多野)
■インドネシア駐在記(パナソニック 菅沼様)
■ブラジル駐在記 (日立JC 佐々木様)
■台湾駐在記(荏原冷熱 勇様)
■中国・マレーシア駐在記(日冷工 長野)
■ノルウェー駐在記(日冷工 坪田)
1.はじめに
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■インド駐在記(日冷工 波多野)
■インドネシア駐在記(パナソニック 菅沼様)
■ブラジル駐在記 (日立JC 佐々木様)
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■中国・マレーシア駐在記(日冷工 長野)
■ノルウェー駐在記(日冷工 坪田)
1.はじめに
私は2009年1月から6年間、ロンドンにある欧州現地法人に技術担当駐在員として単身赴任しました。担当業務は、欧州全域の販売代理店向け技術支援とアフターサービス対応に加え、欧州向け商品企画と環境法規制の調査です。「駐在記」ですから業務上の出来事をご説明したいところですが、ここでは、読者の皆様に興味を持っていただけそうな、私のロンドン生活体験談をご紹介したいと思います。
タイトルは「イギリス(英国)編」ではなく、あえて「ロンドン編」としました。イギリスは文化や風土が異なる4か国(イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランド)の連合王国で、互いの反目もあったりして一括りに語れないこと、私が生活したロンドンは外国人が多く住み、文化面やインフラ面においてイングランド他地域とは状況が異なるためです。記載はすべて実話ですが、あくまで主観的な(若干の偏見を含む?)内容となっていますので、ご容赦ください・・・。
2.夏と冬、そして家探し
「ロンドン駐在」と聞くと、なんとなく華やかで楽しいイメージを想像されるでしょうか。これはYesでもあり、Noでもあります。一言でいうと、「季節と天気次第」です。
夏のロンドンは涼しく日照時間が長いので、晴天の日は本当に快適です。日中の最高気温は20~25℃程度で湿度も低いので、殆どの一般家庭にはエアコンがありません。ですから、イギリスの空調機市場は、ほぼ業務用途のみと言えます。
天気の良い日などは、日差しを求めて多くの人(Sun seekers)が公園の芝生で寝転がったりして、夏を楽しんでいます。夜9時を過ぎても明るさが残っていますから、屋外で1日を有効に楽しめます。遅くまで遊んでいても、明るいので「夜遊び」扱いされませんね。
年に数日だけ30℃を超す暑い日が続くこともありますが、数日ですから多くの人は我慢して過ごします。ただ、公園では真夏のビーチと見紛うような光景が見られます。寒く曇りがちの天候が多いイギリスだからか、皆さん太陽が大好きなんでしょうね。
テニスのウィンブルドン大会が終了すると、ロンドンの夏も終わると言われています。つまり、ロンドンで夏を楽しむのであれば、5月~7月中旬までが目安でしょうか。その後は、日没時間も早くなり、肌寒さも増して秋の気配を感じる季節となります。
夏時間が終わる10月末あたりから、寒くて暗い冬が始まります。天気予報では、白色と灰色の曇マークが使い分けされていて、雨が降りそうな曇天を教えてくれます。(
図)また、雨上がりで湿気が残る曇りの日でも、雨さえ降らなければ「Dry day, today!」と言います。
天気の良い日などは、日差しを求めて多くの人(Sun seekers)が公園の芝生で寝転がったりして、夏を楽しんでいます。夜9時を過ぎても明るさが残っていますから、屋外で1日を有効に楽しめます。遅くまで遊んでいても、明るいので「夜遊び」扱いされませんね。
年に数日だけ30℃を超す暑い日が続くこともありますが、数日ですから多くの人は我慢して過ごします。ただ、公園では真夏のビーチと見紛うような光景が見られます。寒く曇りがちの天候が多いイギリスだからか、皆さん太陽が大好きなんでしょうね。
テニスのウィンブルドン大会が終了すると、ロンドンの夏も終わると言われています。つまり、ロンドンで夏を楽しむのであれば、5月~7月中旬までが目安でしょうか。その後は、日没時間も早くなり、肌寒さも増して秋の気配を感じる季節となります。
夏時間が終わる10月末あたりから、寒くて暗い冬が始まります。天気予報では、白色と灰色の曇マークが使い分けされていて、雨が降りそうな曇天を教えてくれます。(
図)また、雨上がりで湿気が残る曇りの日でも、雨さえ降らなければ「Dry day, today!」と言います。
私がロンドンに着任したのは2008年12月31日、曇天の午後。ヒースロー空港から市北部のFinchley Road駅近くにある仮宿(共同キッチン付きの貸部屋)まで移動したのですが、到着した時には辺りは真っ暗です。大晦日で殆どの店舗やレストランは閉店していて、夕食を求めて寒く寂しい街を徘徊した事を覚えています。そのため、「ロンドン駐在=暗い」が第一印象でした。この暗い雰囲気は冬時間の終わる3月末まで続きますから、11月以降に赴任する方は精神的に落ち込まないよう、注意が必要です。ただ、この冬があるからこそ、夏を思いっきり楽しめるのだと思います。
私の会社では、ロンドン駐在者は「住居と自家用車を自分自身で探す」がルールでした。そのため、着任後は毎週末を住居と中古車探しに費やしました。今思えば、それが気晴らしになって最初の冬を乗り切ったような気がします。因みに、住居は1か月かけて20物件以上を見て回った末に、ロンドン北部のFinchley Central駅(Northern Line)近くにあるアパートに決めました。(写真1)
写真1:入居したアパート
3.交通事情
赴任当初の勤務先はロンドン中心部にあったので、「Tube」の愛称で親しまれている地下鉄で通勤です。他の国際都市と同様に路線網は整備されていており、市内移動に欠かせません。日本と同様に、電車・バス兼用ICカード「Oyster」が導入されていて、運賃支払いも容易。150年以上の歴史を誇る世界最古の地下鉄ですが、信頼性や運行管理はイマイチです。Northern Lineには分岐路線があるのですが、時には行先が突然変更となったり、途中で運行停止して後続車両への乗り換えを強要されたりします。車内放送も訛りの強い英語だと理解困難ですので、乗車中も全く油断できません。また狭い車両には空調が備わっておらず、夏の混雑時には狭い車内も地下駅構内も熱帯気候に早変わり。暑い日には「万が一に備え水持参で乗車して下さい」と注意喚起の車内アナウンスを聞く事も出来ます。さらに、エレベータやエスカレータの無い駅舎が多く、お年寄りや障害者の方、大きな荷物を持っての利用には不便です。(写真2)
ちなみに、車内で居眠りする乗客は殆どいません。私は一度だけTube車内で居眠りした事があります。目覚めて周囲を見渡すと、ニヤニヤしながら私を眺める乗客たちに気が付きました。ただ珍しいからなのか、寝言でもしゃべっていたのか、寝顔が可愛かった(?)のか、居眠り中に何かを盗まれたのか・・・、理由は今も不明です。
ちなみに、車内で居眠りする乗客は殆どいません。私は一度だけTube車内で居眠りした事があります。目覚めて周囲を見渡すと、ニヤニヤしながら私を眺める乗客たちに気が付きました。ただ珍しいからなのか、寝言でもしゃべっていたのか、寝顔が可愛かった(?)のか、居眠り中に何かを盗まれたのか・・・、理由は今も不明です。
写真2:ロンドン地下鉄 - Northern Line
このように試練の多いロンドン地下鉄ではありますが、これを遊園地のアトラクションに見立てて楽しむ術(?)を体得して欲しいと思います。余談ですが、毎朝のTVニュースでは地下鉄の運行状況が紹介されますが、トラブルの無い路線は「Good Service」と表示されます。ロンドンでは、通常通りに運行すれば「Good」なサービスなのです!
一般乗客のマナーにも触れておきたいと思います。ロンドンでは、お年寄りに率先して席を譲ったり、荷物の積降を手助けする若者を普通に見かけます。他方、日本(特に東京)では、若者が平然と座ったまま席を譲らないシーンを良く見かけますが、この点はロンドンを見習って欲しいと思います。
地下鉄と並んで庶民の足となっているのが路線バスです。市内を網の目のようにカバーしており、運賃は一律料金で安く、便数も多いので、行先を理解さえすれば大変便利です。路線によっては2階建バス(Double Decker)が運行していますので、2階席に乗車して市内の遊覧観光にも使えます。ただ、バス停が多くて移動に時間を要する事、時刻表通りに運行しない事、地下鉄同様に突然の運行停止(乗り換え強要)もあり得ますので、これすら楽しむ事が出来るようになれば、あなたはロンドン上級者です。なお、乗り換えを強要された場合は運転手に乗換券を要求し、後続のバスに無料で乗りましょう。(写真3)
写真3:市内を走るバス
バスでの居眠りにも注意してください。終点までに目覚めなければ、バスの車庫で一夜を明かす可能性も(友人の体験談)。
市内を走るタクシーは、後部が対面シートになった専用設計の「Black Cab」。乗り心地はイマイチですが、5名相乗りも可能なのでグループ移動には便利です。運転手には行先を「通り」の名前で告げるのですが、発音(例えば、RとL)が悪いと間違った場所に連れて行かれるので、要注意。
最後に自家用車です。市内は交通量も多くて渋滞気味ですが、日本と違って信号機で止められる事は少なく、ストレス無く走れます。
郊外では無料の高速道路で長距離移動にも有利です。また、市内でも時間帯やエリアによって無料での路上駐車が可能で、特に週末は市内中心部を走行する際に課せられる「渋滞税(Congestion charge)」も徴収されませんから、市中心部に行くにも車を利用する機会が多くなります。
少なくとも、車事情は日本より優れていると断言できます。
郊外では無料の高速道路で長距離移動にも有利です。また、市内でも時間帯やエリアによって無料での路上駐車が可能で、特に週末は市内中心部を走行する際に課せられる「渋滞税(Congestion charge)」も徴収されませんから、市中心部に行くにも車を利用する機会が多くなります。
少なくとも、車事情は日本より優れていると断言できます。
こちらのロンドン駐在記はまだまだ続きますが、今回はここまでです。気になる続きは次号に掲載しますので、お楽しみください。