海外短信クローズアップ「冷媒転換には商品撤退の道筋が重要」
No.652 2017年8月
RAC誌が開催したF-ガス クエスチョンタイムの今回のテーマは、“F-ガスの来たる禁止と段階的削減によって、高GWP冷媒の見通しはどのようになるのか”であった。
F-ガス規制は禁止と削減の2つの措置によって高GWP冷媒の削減を目的としているが、これまでのところ低GWP冷媒への転換は遅い。パネラーの役割は状況が切迫してきていることを明らかにすることであった。(写真)
F-ガス規制は禁止と削減の2つの措置によって高GWP冷媒の削減を目的としているが、これまでのところ低GWP冷媒への転換は遅い。パネラーの役割は状況が切迫してきていることを明らかにすることであった。(写真)
写真:パネラー(左から)
[コンサルタント」 レイ・グラックマン
[ケマーズ] ジャネット・ルーデルト
[ABグループ] ポール・アルウェー
[ABグループ] ポール・アルウェー
[コーオペラティブ・グループ] アドリアン・クラウザー
コンサルタントのレイ・グラックマン氏は見解を次のように述べた。「突然市場はプレチャージ機の輸入に困ることになる。これまでは誰も管理していなかった。機器は今後税関で止められることになろう。適合宣言などF-ガス規制を遵守する体制がとれていないのだ」過去12か月間に多くの低GWP冷媒が市場に導入された。しかしF-ガス規制による削減幅は大きい。「EUの段階的削減では、2016年は7%のカットであり削減幅は小さい。市場には在庫もたくさんあり、価格も安定していた。しかし今年の第一四半期に価格は上昇し、第一四半期の終わりには市場を揺るがすことがあった。ハネウェルが現在中低温用冷媒として広く使われているR404Aについて、今後長く供給することはないと発表したのだ。我々は供給の終わりは近いのだということをもっと設備業者やユーザーに知らせなければならない」と述べた。
■ 期限は迫るが転換は遅い
高GWP冷媒からの転換が遅いため、期限までに間に合うのであろうか。グラックマン氏は難しい挑戦だと言う。「欧州の冷凍空調の業界団体である欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE)では、HFCが計画通り削減されているかを検証するために“ガポメーター(Gapometer)”というプロジェクトを実施している。理論的なモデルを作ってロードマップを策定し、要求事項と実績とのギャップを明らかにしている。これによると、新設の装置については良好な実績となっており、大型スーパーの新設でR404Aを使用しているシステムはもはやない。セパレートエアコンもR410Aから大きく転換しようとしており、おそらくR32かR32の混合冷媒になるであろう。これに対して大型の分離型は可燃性が問題であり、R410Aの使用が当面続くであろう。全般に低GWP冷媒への転換は進んでいない。我々のモデルでは一旦F-ガス規制が発表されたならば、人々は長期的な視点から論理的に行動するものと考えていたが、この仮定は楽観的すぎた。2016年に価格が安かったこともあり転換は起こらなかった。英国では現在転換を加速しているが、ドイツやフランスでは素早い対応が見られない」と述べた。
■ 産業分野の対応が不活発
不活発なのは蒸留再生についても同じとなっている。グラックマン氏は「蒸留再生のインフラが必要なことに気付いていない。英国やフランスは蒸留再生の歴史があるが、その他の国々は実績がないため動いていない」と指摘した。
ケマーズの地域マーケティング・マネージャーであるジャネット・ルーデルト氏は次のように述べた。「F-ガス規制では3年ごとに使用量が削減される。最初に大きく削減される2018年まであと7か月しかない。固い地盤の上に立っているように思われるが、崖はすぐそこに来ている。R404Aの使用は論理的には可能だが、冷媒供給メーカーは低GWP冷媒の供給へと生産を切り替えている」
■ 将来の見通し
使用される低GWP冷媒のある部分は微燃性冷媒になるであろうとグラックマン氏は言う。「今後3年から4年の内に、冷凍空調業界は快適に、また安全に微燃性冷媒を使いこなすであろう。微燃性と可燃性は大きく異なり、R32を燃やすのは大変難しい。裸火の下では発火するが、火を遠ざけると消えてしまう。R32はプロパンやブタンと違って炎は伝播しない」
英国の環境貿易協会連合(FETA)のコマーシャル・マネジャーであるマーティン・クーパー氏は「会員企業の力を借りて微燃性冷媒(A2L)のガイドを発行した。これは微燃性冷媒の概要と事例をとりまとめたものであり、部屋の大きさをもとに冷媒の充てん量を算出できる。FETAのウェブサイトからみることができる」と述べた。
カーボン・トラスト社の計画担当役員であるポール・ハギンス氏は「市場の80%はまだR404Aを使用している。これを変更するのは大きな挑戦といえる。削減割当量を皆口にするが平均的なバイヤーは削減割当を気にしていない。転換するには商品の撤退の道筋を明確に示す必要がある。経済的な損得を明らかにしないと、段階的な削減の現実的な意味が消費者には分からない」と述べている。
〔出典RAC July 2017 https://www.racplus.com/news/f-gas-question-time-understanding-the-urgency/10021451.article 〕
■ 期限は迫るが転換は遅い
高GWP冷媒からの転換が遅いため、期限までに間に合うのであろうか。グラックマン氏は難しい挑戦だと言う。「欧州の冷凍空調の業界団体である欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE)では、HFCが計画通り削減されているかを検証するために“ガポメーター(Gapometer)”というプロジェクトを実施している。理論的なモデルを作ってロードマップを策定し、要求事項と実績とのギャップを明らかにしている。これによると、新設の装置については良好な実績となっており、大型スーパーの新設でR404Aを使用しているシステムはもはやない。セパレートエアコンもR410Aから大きく転換しようとしており、おそらくR32かR32の混合冷媒になるであろう。これに対して大型の分離型は可燃性が問題であり、R410Aの使用が当面続くであろう。全般に低GWP冷媒への転換は進んでいない。我々のモデルでは一旦F-ガス規制が発表されたならば、人々は長期的な視点から論理的に行動するものと考えていたが、この仮定は楽観的すぎた。2016年に価格が安かったこともあり転換は起こらなかった。英国では現在転換を加速しているが、ドイツやフランスでは素早い対応が見られない」と述べた。
■ 産業分野の対応が不活発
不活発なのは蒸留再生についても同じとなっている。グラックマン氏は「蒸留再生のインフラが必要なことに気付いていない。英国やフランスは蒸留再生の歴史があるが、その他の国々は実績がないため動いていない」と指摘した。
ケマーズの地域マーケティング・マネージャーであるジャネット・ルーデルト氏は次のように述べた。「F-ガス規制では3年ごとに使用量が削減される。最初に大きく削減される2018年まであと7か月しかない。固い地盤の上に立っているように思われるが、崖はすぐそこに来ている。R404Aの使用は論理的には可能だが、冷媒供給メーカーは低GWP冷媒の供給へと生産を切り替えている」
■ 将来の見通し
使用される低GWP冷媒のある部分は微燃性冷媒になるであろうとグラックマン氏は言う。「今後3年から4年の内に、冷凍空調業界は快適に、また安全に微燃性冷媒を使いこなすであろう。微燃性と可燃性は大きく異なり、R32を燃やすのは大変難しい。裸火の下では発火するが、火を遠ざけると消えてしまう。R32はプロパンやブタンと違って炎は伝播しない」
英国の環境貿易協会連合(FETA)のコマーシャル・マネジャーであるマーティン・クーパー氏は「会員企業の力を借りて微燃性冷媒(A2L)のガイドを発行した。これは微燃性冷媒の概要と事例をとりまとめたものであり、部屋の大きさをもとに冷媒の充てん量を算出できる。FETAのウェブサイトからみることができる」と述べた。
カーボン・トラスト社の計画担当役員であるポール・ハギンス氏は「市場の80%はまだR404Aを使用している。これを変更するのは大きな挑戦といえる。削減割当量を皆口にするが平均的なバイヤーは削減割当を気にしていない。転換するには商品の撤退の道筋を明確に示す必要がある。経済的な損得を明らかにしないと、段階的な削減の現実的な意味が消費者には分からない」と述べている。
〔出典RAC July 2017 https://www.racplus.com/news/f-gas-question-time-understanding-the-urgency/10021451.article 〕
以上
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