資源エネルギー庁長官賞 三菱重工サーマルシステムズ株式会社
No.650 2017年4月
このたび、資源エネルギー庁長官賞を、当工業会会員の三菱重工サーマルシステムズ株式会社が受賞しましたので、その詳細についてご紹介します。
[製品・ビジネスモデル部門/製品(業務)分野]
省エネルギー、大容量、コンパクト
ターボ冷凍機 「GART/GART-Iシリーズ」
表彰される三菱重工サーマルシステムズの取締役社長 楠本馨氏
1.製品開発の背景
益々大規模化・高層化する都市や建物の熱供給施設の熱源機として使用されるターボ冷凍機は、エネルギー消費量削減の観点から高効率化、また限られた設置スペースからコンパクト化が重要である。当社はこうした市場のニーズ、高効率・高機能・コンパクト化へのソリューションとして、現行冷媒HFC-134aを用いて、最新技術とアイデアを適用した新しい大容量ターボ冷凍機「GART/GART−Iシリーズ」を開発した。開発機は圧縮機一台で冷凍能力500米国冷凍トン(USRt)から2700 USRt、2ユニット組み合わせのパラレルモデルで最大5400USRt(本原稿作成時は最大6000USRt)まで対応する。
益々大規模化・高層化する都市や建物の熱供給施設の熱源機として使用されるターボ冷凍機は、エネルギー消費量削減の観点から高効率化、また限られた設置スペースからコンパクト化が重要である。当社はこうした市場のニーズ、高効率・高機能・コンパクト化へのソリューションとして、現行冷媒HFC-134aを用いて、最新技術とアイデアを適用した新しい大容量ターボ冷凍機「GART/GART−Iシリーズ」を開発した。開発機は圧縮機一台で冷凍能力500米国冷凍トン(USRt)から2700 USRt、2ユニット組み合わせのパラレルモデルで最大5400USRt(本原稿作成時は最大6000USRt)まで対応する。
2.新製品の特徴
高効率とコンパクトを両立するために開発、適用した技術は以下の通りである。
(1) 大風量、かつコンパクトな遠心圧縮機
圧縮機は冷凍機の性能を決定する重要な要素である。開発圧縮機は高効率化とコンパクト化の両立を図るため、数値流体解析(CFD)で評価し、冷媒流れの乱れを抑制できる空力形状を採用した。設計コンセプトは小型・高速回転・大風量とし、羽根車形状は小径でも大風量が得られる形状に改良している。また、1段入口ベーン(IGV)のリンク形状を見直し、稼働域を拡大させることによって良好な制御性と大風量特性を両立した。その他各部の機械損失低減も行い、従来機対比で効率1.5%向上と容積最大30%、質量最大35%それぞれ低減した。
高効率とコンパクトを両立するために開発、適用した技術は以下の通りである。
(1) 大風量、かつコンパクトな遠心圧縮機
圧縮機は冷凍機の性能を決定する重要な要素である。開発圧縮機は高効率化とコンパクト化の両立を図るため、数値流体解析(CFD)で評価し、冷媒流れの乱れを抑制できる空力形状を採用した。設計コンセプトは小型・高速回転・大風量とし、羽根車形状は小径でも大風量が得られる形状に改良している。また、1段入口ベーン(IGV)のリンク形状を見直し、稼働域を拡大させることによって良好な制御性と大風量特性を両立した。その他各部の機械損失低減も行い、従来機対比で効率1.5%向上と容積最大30%、質量最大35%それぞれ低減した。
(2) 従来性能を維持したコンパクトな熱交換器
シェル&チューブ型熱交換器である蒸発器と凝縮器には高効率薄肉の伝熱管を採用した。熱交換器全体のCFDにより、伝熱管本数・長さ・管径・配置の組合せを改良して伝熱面積を最小化し、従来機対比で伝熱管本数の削減と円筒シェルの小径化を実現した。蒸発器では管群内で局所的に冷媒ガス割合が増加するドライアウトや、圧縮機への液滴の吸込みを管群配置と液分離構造を見直して防止した。凝縮器では効率的に熱交換できるよう、管群内に冷媒ガス流路を設けた。
シェル&チューブ型熱交換器である蒸発器と凝縮器には高効率薄肉の伝熱管を採用した。熱交換器全体のCFDにより、伝熱管本数・長さ・管径・配置の組合せを改良して伝熱面積を最小化し、従来機対比で伝熱管本数の削減と円筒シェルの小径化を実現した。蒸発器では管群内で局所的に冷媒ガス割合が増加するドライアウトや、圧縮機への液滴の吸込みを管群配置と液分離構造を見直して防止した。凝縮器では効率的に熱交換できるよう、管群内に冷媒ガス流路を設けた。
(3)構成機器の空間占有率向上
各構成機器の小型化を行うとともに、構成機器を配置する際の上下方向の空間を活用し、構成機器の空間占有率(=構成機器が占める容積÷冷凍機全体の空間容積)を考慮したコンパクト設計を行った。開発機では蒸発器上に圧縮機を設置し、凝縮器を圧縮機横に、凝縮器の下にサブクーラ、エコノマイザ、回路ボックスを設置することにより空間占有率を向上させた。結果、ユニット容積を従来機対比で最大40%削減した。
各構成機器の小型化を行うとともに、構成機器を配置する際の上下方向の空間を活用し、構成機器の空間占有率(=構成機器が占める容積÷冷凍機全体の空間容積)を考慮したコンパクト設計を行った。開発機では蒸発器上に圧縮機を設置し、凝縮器を圧縮機横に、凝縮器の下にサブクーラ、エコノマイザ、回路ボックスを設置することにより空間占有率を向上させた。結果、ユニット容積を従来機対比で最大40%削減した。
3.省エネルギー性
開発機のJIS条件定格COPは世界最高水準の6.5を達成した。部分負荷性能も向上させ、固定速機でIPLV7.24、インバータ機でIPLV 9.29と、従来機対比で6.4%と10.5%それぞれ向上した(図1)。ターボ冷凍機はほとんど部分負荷で運転されており、部分負荷の性能向上が、ユーザーメリットとなる。開発機は可動域が拡大されたIGVにより最大冷凍能力側を拡大させ、さらに圧縮機のピーク効率点を部分負荷にシフトした。その結果、部分負荷COP は向上し、定格COP 以上にIPLV を向上させることができた。当社従来機比で、東京都内の一般空調負荷条件において、最大68%の省エネルギー効果を確認した(図2)。開発機の出荷実績は国内外合わせて累計171台・累計冷凍能力1,091MW(2016年9月時点)となり、様々な熱源インフラの省エネルギーに貢献している。
図1:機器仕様
開発機のJIS条件定格COPは世界最高水準の6.5を達成した。部分負荷性能も向上させ、固定速機でIPLV7.24、インバータ機でIPLV 9.29と、従来機対比で6.4%と10.5%それぞれ向上した(図1)。ターボ冷凍機はほとんど部分負荷で運転されており、部分負荷の性能向上が、ユーザーメリットとなる。開発機は可動域が拡大されたIGVにより最大冷凍能力側を拡大させ、さらに圧縮機のピーク効率点を部分負荷にシフトした。その結果、部分負荷COP は向上し、定格COP 以上にIPLV を向上させることができた。当社従来機比で、東京都内の一般空調負荷条件において、最大68%の省エネルギー効果を確認した(図2)。開発機の出荷実績は国内外合わせて累計171台・累計冷凍能力1,091MW(2016年9月時点)となり、様々な熱源インフラの省エネルギーに貢献している。
図1:機器仕様
図2:省コスト比較
4.低GWP冷媒対応設計
地球温暖化防止のため、低GWP(Global Warming Potential)冷媒への転換が重要である。開発機はHFC-134aだけでなく、低GWP冷媒の適用を考慮した。2016年11月の高圧ガス保安法改正により、転換候補冷媒であったHFO-1234ze(E)は機械換気装置や冷媒検知器を備えることでHFC-134a同等の取り扱いが可能となった。本改正に対応し、開発機をベースにHFO-1234ze(E)を採用した「GART−ZE/ ZEIシリーズ」を2017年2月に発表した。国内メーカとして初めて、小容量から大容量までのターボ冷凍機シリーズを低GWP冷媒でラインアップしている。
地球温暖化防止のため、低GWP(Global Warming Potential)冷媒への転換が重要である。開発機はHFC-134aだけでなく、低GWP冷媒の適用を考慮した。2016年11月の高圧ガス保安法改正により、転換候補冷媒であったHFO-1234ze(E)は機械換気装置や冷媒検知器を備えることでHFC-134a同等の取り扱いが可能となった。本改正に対応し、開発機をベースにHFO-1234ze(E)を採用した「GART−ZE/ ZEIシリーズ」を2017年2月に発表した。国内メーカとして初めて、小容量から大容量までのターボ冷凍機シリーズを低GWP冷媒でラインアップしている。
5.おわりに
ターボ冷凍機市場で今まさにあるニーズのソリューションとして、現行冷媒HFC-134aを採用し、高効率とコンパクトを両立した大容量ターボ冷凍機「GART/GART−Iシリーズ」を開発した。
当社は今後も市場のニーズにあわせて、継続的にお客様の満足が得られる冷凍機を提供していく所存である。
ターボ冷凍機市場で今まさにあるニーズのソリューションとして、現行冷媒HFC-134aを採用し、高効率とコンパクトを両立した大容量ターボ冷凍機「GART/GART−Iシリーズ」を開発した。
当社は今後も市場のニーズにあわせて、継続的にお客様の満足が得られる冷凍機を提供していく所存である。