坪久田会長あいさつ
No.648 2017年1月
旧年中は、皆様方より格別なるご支援を賜り、心より厚く御礼申し上げます。
昨年は6月の英国国民投票においてEU離脱方針が決まり、11月の米国大統領選挙では共和党のトランプ候補が勝利するなど、意外な結果に驚かされた1年でした。
英国のEU離脱については、幸い国内景気へのインパクトは比較的小さく、当冷凍空調業界でも平成28年度上半期までの国内向け出荷状況(自主統計ベース)は、家庭用エアコンが対前年同期比102.4%、業務用エアコンが103.0%など堅調に推移しました。一方米国の大統領選挙については、今のところ期待のほうが不安を上回っているように見えますが、新政権の方針が具体的に見えるようになるのはこれからで、国内景気への影響もまだ不透明な状況です。
新年賀詞交歓会で挨拶する当工業会の坪久田会長 |
昨年は当冷凍空調業界に直接関係する環境分野でも大きな動きがありました。国内では11月に高圧ガス保安法および政省令が改正され、3冷凍トン以上の製品に微燃性冷媒を使用するための法的基盤が整備されました。一方、国際的には10月にルワンダのキガリで開催された第28回モントリオール議定書締約国会議でHFCの段階的削減計画が実質合意され、地球温暖化への対応は新しい実行段階に入りました。
このような状況のもと、当工業会では昨年の年次総会でもご説明した「環境問題への適切な対応」、「規格・基準への対応」、「安全性への取り組み」、「国際活動の推進」に継続的に取り組んでまいります。
1点目の「環境問題への適切な対応」につきましては、昨年高圧ガス保安法および政省令が改正され、これまでより広い範囲の製品に微燃性冷媒を使用できる基盤が整備されましたので、今後のフロン排出抑制法指定製品の拡大へ向けての製品技術開発に取り組んでまいります。
一方キガリで合意された先進国のHFC削減計画においては、2029年の70%削減が大きなターゲットになると思われます。当工業会ではフロン排出抑制法で定められている従来からの削減計画を着実に実行しつつ、新たなターゲットへ向けた追加の新技術開発にも積極的に取り組んでまいります。
2点目の「規格・基準への対応」につきましては、昨年は高圧ガス保安法および政省令の改正に合わせて微燃性冷媒使用に係る多くのJRA工業会製品規格およびガイドラインの作成、改定を進めてまいりました。本年もこれら製品規格とガイドラインの充実をはかるとともに、IECおよびISO国際規格の制定・改定作業にも参画してまいります。
3点目の「安全性への取り組み」につきましては、従来同様消費者の皆様が安心してお使いになれるよう、電気用品安全法の改正についての業界方針の作成と、情報の周知徹底に取り組んでまいります。
また、先にご紹介した工業会製品規格およびガイドラインの作成にあたっては、微燃性冷媒の安全性を確実に担保できるよう、政府の規制改革会議や高圧ガス小委員会の動向を確認しながら取り組んでまいりました。モントリオール議定書締約国会議でのHFC削減計画合意に伴い、国際的には一部の国からプロパン等の地球温暖化係数は低いものの、強燃性の冷媒を推進しようとする動きが見られます。当工業会では、微燃性冷媒について進めてきたリスクアセスメント等の安全検証をこれら強燃性冷媒にも適用し、これらの冷媒の使用についての課題を明確にしてまいります。
4点目の「国際活動の推進」につきましては、昨年12月に第12回となる国際シンポジウムを神戸で開催し、学会と産業界共同の微燃性冷媒リスク評価研究会が5年間にわたって検討してきた安全ガイドラインや漏えい検知警報規格の成果などの報告を行いました。
また、モントリオール議定書締約国会議に先駆けて7月にウィーンで開催された第38回OEWGではサイドイベントを開催して、微燃性冷媒リスクアセスメント等日本のこれまでの活動を紹介しました。
昨年11月に発効したCOP21パリ協定や、10月のモントリオール議定書締約国会議でのHFC削減計画合意に代表されるように、近年世界全体の課題として大きく取り上げられてきた環境問題は、実行段階へとステージを移しつつあります。この問題に対して日本は、世界に先駆けて微燃性冷媒のリスク評価を行ってルームエアコンに採用し、フロン排出抑制法をスタートして冷媒漏えい防止管理を行うなど実践的な技術を持っていますので、今後いろいろな国際会議でこれら日本の技術や考え方を世界に発信してまいります。
以上のように、当冷凍空調業界では環境問題を引き金としてさまざまな技術革新や、これまで以上のグローバル化が進んでいます。当工業会会員の皆様が担われる事業分野は、日本の基幹産業の一つであり、その製品、機器、サービスは幅広い分野で不可欠な存在ですが、グローバルな地球環境問題に対しても大きな責務があり、世界をリードできる可能性を持った事業分野との気概を持って今年一年を過ごしてまいりたいと存じます。
当工業会は会員企業の皆様の会費によって運営されており、この場をお借りして会員の皆様に感謝を申し上げます。皆様にとって有益な施策を継続的に進めていくことで、統一した方針の下に日本の冷凍空調メーカーの代表として、日本の産業競争力・国力の向上に努めてまいります。
本年も皆様方のなお一層のご指導・ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上
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